野村訓市さん、帰ってきた〈パーク ハイアット 東京〉へ

映画『ロスト・イン・トランスレーション』の舞台としても知られるホテル〈パーク ハイアット 東京〉。オリジナルデザインを最大限に生かしつつ、開業30年を経てリニューアルオープンした。映画製作に関わった野村訓市さんにとって、思い出深い場所だという。変わらないからこそ、つながっていく思いとは?

photo: Tetsuya Ito / text: Rie Nishikawa

映画『ロスト・イン・トランスレーション』の舞台、ホテル〈パーク ハイアット 東京〉がリニューアル

Welcome Back to PARK HYATT TOKYO
映画製作に携わった野村訓市さんが訪れました

「あえて変わらないリニューアルに安心しました。同じ雰囲気のまま、親子2世代、3世代で通える老舗ホテルが少なくなってきた東京では稀少な存在。同時に、今の時代の居心地のよさも感じられるのがいい」と野村訓市さん。

隠れ家のようなロケーションに、高層階からの眺望、上質なインテリアデザイン……。〈パーク ハイアット 東京〉は野村さんを含め、多くの人々にとって特別なホテルだ。開業30年を機に約1年半をかけて行われた全面改修では、伝説的デザイナー、ジョン・モーフォードによる開業時からのデザインがほとんどの場所で再現された。客室やラウンジ、レストランの一部など、新装されたエリアも、シームレスに溶け込んでいる。

このホテルの魅力が世界的に認知されたきっかけの一つが、映画『ロスト・イン・トランスレーション』。監督・脚本のソフィア・コッポラが日本に滞在した体験を基にした半自伝的な作品で、東京を舞台に旅人が異国で感じる孤独や戸惑いが描かれる。ビル・マーレイ演じるハリウッドの俳優と、スカーレット・ヨハンソン演じる夫の仕事に同行した若妻が、作中でこのホテルに滞在している。特に最上階の〈ニューヨーク バー〉は2人の出会いの場であり、繰り返し登場する。

「友人だったソフィアから連絡が来て、ロケ地を探して一緒に都内を歩き回ったり、時には撮影に同行したり」と、振り返る野村さん。カラオケやクラブのパーティシーンでは、自身も友情出演している。作品は、2004年のアカデミー賞で、作品賞や監督賞など主要4部門にノミネートされ、脚本賞を受賞した。

パーク ハイアット 東京 ニューヨーク バーでジャズバンドの演奏を楽しむ野村訓一
最上階にあり、ホテルを象徴する〈ニューヨーク バー〉でジャズバンドの演奏を楽しむ野村さん。野村さんにとって、映画製作中、最も記憶に残る場所だとか。改修前の優れたデザインを完全再現した姿には、ホテルを愛するゲストの思い出を尊重する、〈パーク ハイアット 東京〉の姿勢が表れている。

「当時はここにも街にも外国人は少なくて、彼らにとっては、作品通りの異国感があったようです。映画のヒットもあって東京を目指す海外の人が増えて、インバウンドブームの先駆けになったかな」

二十数年経った今でもなお、ホテルゲストの間には映画の影響があると聞くと、「みんな、このホテルの“陸の孤島”感が好きなんですよね。どこへ行くのにも近く、どこからも近すぎない。決して便利な立地じゃないけれど、ホテルを拠点に車で行き来して街を見渡す、旅先ではそんな時間も重要だと思うんです」。

出先からホテルに戻って高層階に上がると、街の喧騒とかけ離れた静かな別世界が広がる。周囲に高い建物がなく、360度見渡せるので視界が開け、一層特別な東京を体感することができるという。

ソフィア・コッポラは今でも常々、この〈パーク ハイアット 東京〉が世界で一番好きな場所だと話しているのだとか。

「彼女はホテルが改修で変わってしまわないか心配していたんですが、大丈夫だと伝えます。次の来日時には、ミュージシャンとして活動を始めた娘のロミーと、ここを訪れるのも面白いかもしれないね。変わらないからこそ、思いが受け継がれていく。そうして長年、愛されるホテルになっていくんじゃないかな」

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