やっぱり、自分しか歌ってない歌を歌わないと
昨年末、デビュー30周年記念公演『How does it feel?』を成功させたパラダイス・ガラージ/豊田道倫。
誰かの物語を想起させる歌詞、熱のこもったメロディラインで多くの音楽フリークを魅了してきた。新アルバム『sexy』でも人間のドラマを歌い上げている。
「僕はほかのやつが歌ってない、自分だけが歌える歌を歌ってる。自由なことがしたいと思ってロックを選んだけど、今の世界は表現と倫理が同じになってしまった。情欲が掻(か)き立てられるような生々しさに憧れを感じているのかもしれないね。正しいだけじゃないことにも」
音楽への強い憧れと、正しさのはざまで
「自分のことをあんまり振り返らないから、トリビュートアルバムの発売はいい機会になりました。曲がどんどん解体される感覚で。自分のメロディを人が歌うと、こんなにいい曲だったんだって(笑)」
自身をリスペクトする多くのミュージシャンが参加したアルバムをそう振り返った豊田道倫。活動拠点を東京から大阪に移してはや5年、大阪はゆっくり歩ける町だという。
「僕が思うに、大阪はおっちゃんとおばちゃんの町です。居酒屋のカウンターで肩を寄せ合っている中高年を見るとなんとも言えない色っぽさを感じる。そういう手触りのある人間を見ると歌が生まれる。言いたいことはあんまりなくって、情景やストーリーとメロディを合わせています」
長年、表現者として活動する中で音楽の在り方の変化も存分に見てきた。
「サブスクでビートルズもボブ・ディランもなんだって聴ける時代になった。だけど、サブスク用にリマスタリングされたサウンドはレコードで聴くのとは全然ちゃうね。50s〜60sのレコードを聴くと“これが世界を変えた音なんだ”って、思える。音楽も映像も文学も一瞬で全部にアクセスできるからこそ、誰かに届いている手応えが欲しい。CDの入手方法を電話にしてみるとか。どうしようもない曲を集めたアルバムも作りたい。
自由の象徴だったロックが表現も売り方もパターン化されて、ちゃんとしたいいものになってしまった。本来は時間も守れない人間がロックをやっていたはずなのに。最近は、正しいこととそうじゃないことがはっきりと線引きされている。表現者も例外なく個人の振る舞いの正しさを求められるけど、その規範に従うとまあまあなものしか作れない。だからこそ、人間の想像力を、人間にぶつけられるような作品を作りたいと思っています」




