吉田隆人:京都御苑
闇夜に包まれてなお気高く美しい、古都のセントラルパーク

長く東京で働いた後にUターンし、週末には子供と鴨川で遊んだりと京都暮らしを堪能する吉田隆人さんが、圧倒的な静謐(せいひつ)さを感じるのは夜の〈京都御苑〉。
「地下鉄で帰宅時、乾御門から東側の石薬師御門へと通り抜ける御苑は、どこまでも暗く街の明かりがほとんど届きません。普段頼りにしている視覚が次第に曖昧になり、ほかの感覚が研ぎ澄まされていくように思います。足を止めて写真を撮ったり散策したりするうち、帰路が長くなってしまいます」
原摩利彦:Millet
山に囲まれた静原の「非日常」のカフェへ

映画『国宝』の劇伴も手がけた音楽家の原摩利彦さん。彼が「数年前から家族で月に1度は」訪れるのが〈Millet〉。市内中心部からは車で30分ほどの、周りを山々に囲まれたカフェだ。店の裏には畑があり、米も栽培。石窯で焼くパンと静原の豊かな自然を生かした食材のヴィーガンランチが楽しめる。
聞けば、オーナーとは旧知の間柄で店内でコンサートを開催したり、田んぼで田植えを手伝うこともあるとか。訪れるのは「安らぎを求めて、ですね。この自然環境は街中に比べると非日常的に感じます。予定のない時間を作るようにしていますが、忙しい時ほど〈Millet〉で過ごす時間が待ち遠しいです」。
醍醐寺や智積院など、神社仏閣や庭園でのコンサートやプロジェクトに関わる機会も少なくない。
「〈Millet〉の周りもですが、自然環境で耳を澄ませば、虫の声や風の音など、さまざまな音が聞こえてくる。演奏はそんな中に自分のピアノの音を置く作業です。もう耳が開くというか背筋が伸びるというか。でも音楽は、雅楽をはじめ、もともと自然の中で演奏されてきたもの。
『国宝』では、僕が映画に音を付ける前に、既に劇中劇の歌舞伎の音楽が存在していた。だからこれまでの経験を生かして、新たな音をどこに配置していくのか?音と音がどう共存できるのか?を考えて作曲しました。なかなか難しかったですけどね」
窓から柔らかな日差しがたっぷりと差し込む店内での尽きない音の話。原さんは、こんな空間で創作の鋭気を養っているようだ。
