日本ロックの歴史における最初のパンク、最初のインディーズとして重要な、1980年前後に勃興したムーブメント「東京ロッカーズ」が、『アイデン&ティティ』以来二十数年ぶりにタッグを組んだ田口トモロヲ監督と脚本の宮藤官九郎によって映画化された。
1970年代末期、日本初のインディーズのムーブメント「東京ロッカーズ」を、その渦中にいた地引雄一が自らの写真とともに記録した本が、田口トモロヲ&宮藤官九郎の手で映画に。監督:田口トモロヲ/出演:峯田和伸、若葉竜也、吉岡里帆、仲野太賀、間宮祥太朗ほか/2026年3月27日、全国公開。
約20年前に峯田和伸に初めて演技をさせた2人は、今作の主演も彼に託した。『アイデン&ティティ』は、いわゆるミニシアター系の映画だったが、本作のもう1人の主人公=TOKAGEのモモを演じた若葉竜也にとって、強い思い入れのある作品だという。
──『アイデン&ティティ』は、公開当時、大きな規模で上映された映画ではなかったですが、実は若葉さんの世代にとっては……?
若葉竜也
絶大な影響を与えた映画、というのが当時の印象です。観たあとの、価値観ごと揺るがされてしまう感じというか、自分と同じような悩みや衝動を共有できて……映画を観た行き帰りの道が違って見えるぐらいの衝撃がありました。
僕は大衆演劇をやっていて(*実家が大衆演劇の一座で、幼い頃から舞台に立っていた)、役者、もうマジでやりたくないと思ってたんですけど(笑)、『アイデン&ティティ』を観て、こんな映画があるんだったらやってみたいかもって思ったほどだったので。だから、オファーがあった時は、やっとここまで来たか、っていう感じでした。峯田さんの音楽も、めちゃめちゃ聴いてたし。
あの頃、『アイデン&ティティ』が映画になる、峯田さんが主役だって知った時の感覚。その人と自分の一生の中で、何本作れるかわかんないものを一緒に作れるっていう経験はもう特別でした。

──峯田さんは若葉さんと共演してみて、いかがでした?
峯田和伸
撮影って、リハーサルも、本番も、何回もやるじゃないですか。やっぱり毎回同じにはなんないから、「このニュアンスの方がいいかな」とか思いながら向かっていく作業だと思うんですけど、若葉くんは毎回反応が違うから。「あ、ここでまばたきするんだ?」とか「ここで顔を動かしてくるのか」とか。
「次、こういう感じでやんない?」とか言わなくても、台本を読んだ時よりも……若葉くんと2人でやっていくと「このシーンって、こんなに幅広くできるんだな」みたいな。空気がどんどん変わっていくの。それがめちゃくちゃ面白かった。

──監督が峯田さんを、唯一バンドマンではないユーイチ(原作者)役にしたのが、大正解だと思いました。
峯田
ユーイチは……あの、俺、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』って映画の『1』の冒頭の15分がすごい好きで。何も起きない日常がドクの登場によって激変して、気づけばとんでもない世界に巻き込まれていく。
あれと一緒で、ユーイチも「ライブハウスに来い」っていう一通の手紙をきっかけに、初めてライブハウスに足を運ぶ。そこから一気に、すごい世界に呑み込まれていく。傍観者だったはずの彼がいつの間にか当事者になっていく、っていう。いい話だなあ、と思った。

──「東京ロッカーズ」を経験している世代や、後追いで学んだロックファンではない、全然知らない人たちがこの映画をどう観るのかという懸念はありましたか?
若葉
それは全然心配してないです。懐古主義の映画ではなくて、2026年の今と、ちゃんと共鳴するものがたくさんある。僕自身、今自分の中にあるいろんなフラストレーションや怒りが、全部台本に落とし込まれていたと感じたし。自分が思っていたことが、言語化されてセリフになっているみたいな。
本気でものを作ろうとしている人たちみんなが直面することが、ちゃんとそこに書いてある。昔の話だから、若者が観て当事者になれない、ということには絶対ならない。『アイデン&ティティ』を観た時の自分たちがそうだったから、絶対大丈夫、って言えますね。
