振り付けとアイドルソングの関係って?いぎなり東北産と竹中夏海が語るコレオグラフィの現在地

この数年で、アイドルソングの振り付けは大きく変わった。その現場を見続けてきた振付師の竹中夏海と、2025年結成10周年を迎えメジャーデビューをしたいぎなり東北産にコレオグラフィの現在地を語ってもらった。

photo: Koh Akazawa / text: Sho Kasahara

語ってくれた人

竹中夏海(振付演出家、エンタメ産業カウンセラー)
たけなか・なつみ/2009年に〈PASSPO☆〉を担当後、これまでに500人以上のアイドルの振り付けを手がける。アイドル業界の働き方や心身の健康の改善にも積極的に取り組む。

律月ひかる(いぎなり東北産)
りつき・ひかる/2001年生まれ、秋田県産。メンバーカラーは純白(ぴゅあほわいと)。竹中プロデュースのアイドルコントバトル『おもカワ』にも出演。

桜ひなの(いぎなり東北産)
さくら・ひなの/2004年生まれ、岩手県産。愛称は、「もんちゃん」。2026年1月公開の映画『恋愛裁判』では、劇中アイドルのメンバー役で出演。

竹中夏海

私が振り付けしたのは、るんちゃん(律月ひかる)が作詞した「狂くるどっかーん♡」と、メジャー1stシングル収録の「always無礼講!」の2曲。自分で書いた詞に振りが付くのってどんな感覚だった?

律月ひかる

言葉が踊りだしたというか……自分の中の思いが振り付けになるのは新鮮でした。振り入れのときに竹中さんが「どういう気持ちで書いたの?」って聞いてくださって。歌詞の意図を汲んでもらえたのが本当にうれしかったです。

竹中夏海

私は、普段から歌詞を読んで湧いた感情を振り付けにしていて。自分自身に何も響かない歌詞ってペタッと平面に見えるんだけど、るんちゃんの歌詞はムクムクッと立体的に浮いて見えた。「これは本当に伝えたいことがある人の言葉だ!」って。児玉雨子さんの歌詞を初めて読んだとき以来の感覚だったんだよね。

桜ひなの

天才だ!歌詞ってどうやって作ったの?

律月ひかる

秘密のノートにずっと温めてきた言葉があって。今回は、「トンチキラブソング」をテーマにしたくて、その言葉たちから膨らませていきました。「立体的に浮かぶ歌詞」って、どんなものですか?

竹中夏海

書いている人の意思が見えることが共通点かな。例えば「海の底で息ができそう 意味わかんないでしょ?」って突き放したり。「相性診断 合うわけない 理不尽=愛でしょ」って急に核心を突くフレーズが出てきたり。そういう言葉選びに、るんちゃんの美学を感じて、振りを作ってて楽しかった。

それに、“くるくる”みたいに動きのモチーフがある言葉は振りに落とし込みやすい。逆に「友情」「情熱」みたいな抽象的な言葉は難しいんだよね。

竹中さんの振り付けのココが好き

大TikTok時代が変えた、振り付けの組み立て方

竹中夏海

アイドル界全体の振り付けで言うと、ここ数年でSNS動画が流行り始めてから本当に変わったよね。東北産も10年活動する中で、変化を肌で感じているんじゃない?

桜ひなの

昔の曲は、体全体を使った大きい振りやライブでの真似しやすさを重視していました。でも2020年代に入ってから、手振りや指先を使ったTikTok向けの小さくてかわいい振りが多くなったと感じています。

竹中夏海

顔周りで収まる動きやフィルターの邪魔にならない振りを考える必要があるんだよね。例えば、ハートの振りも、ライブでやるなら2人で作る形。TikTok用だったら1人で完結できるようにするとか。

律月ひかる

ライブはマイクを持つので振りは片手だけ、MVでは両手を使う振り、ショート動画ではカメラ映りを意識して……。覚える側からすると、3パターンあって本当に大変です(笑)。

竹中夏海

それにしてもいぎなり東北産は、パフォーマンスのスキルが高いよね!メンバーそれぞれの個性の見せ方もうまいと思う。

桜ひなの

うれしいです!東北産は、かわいい曲から元気な曲まで幅が本当に広い。楽曲ごとにまったく違う自分になれるのが楽しいです。メンバーも大人になってきたし、もっとかっこいい振り付けにも挑戦したいなと思っています。そういえば私たちって初期の頃は、振りも自分たちで作ってたよね?

律月ひかる

懐かしいねー!ほかの先生には「ダンサーにはない音の取り方で斬新」と言われました(笑)。

竹中夏海

自分たちでコレオに取り組んでみるのは素晴らしいね!歌って特殊能力に近くて。アイドルからボイストレーナーになる子ってほぼいないでしょ。でも振り付けってグループに大体1人はできる子がいるんですよ。オーディション番組を観ていてもわかるように、踊れなかった子が半年で見違えることって珍しくない。現役のうちからどんどん挑戦してほしいです!

いぎなり東北産・桜ひなの、律月ひかる、振付演出家、エンタメ産業カウンセラー・竹中夏海
レッスン場で曲を口ずさみながら、振り付けの確認をする3人。左から/桜ひなのさん、竹中夏海さん、律月ひかるさん。

編集部が選ぶ注目のコレオグラファー

槙田紗子

2009年、ガールズユニット〈PASSPO☆〉のメンバーとしてデビュー。グループ卒業後、振付師としてのキャリアをスタートし、FRUITS ZIPPERや超ときめき♡宣伝部ら人気アイドルを担当。次々とバズを生む振り付けで注目を集める新世代のコレオグラファー。

CANDY TUNE「倍倍FIGHT!」
CANDY TUNEの「倍倍FIGHT!」では、思わず真似したくなるキャッチーな動きが盛り込まれておりSNSを中心に話題を集めている。

RENAN

19歳で単身渡韓し、K-POPシーンで活躍する新進気鋭の日本人ダンサー。振付師としては、XGやRed Velvet、ILLIT、G-DRAGONらを担当。アイドル好きが高じて、ステージ上での見せ方を徹底的に研究。見せ場を最大化したコレオが魅力。

aespa「Whiplash」
aespa「Whiplash」では、メインディレクターを務め、曲の終盤でポーズを決める「スーパージゼルタイム」が注目を集めた。

CRE8BOY

48グループや坂道シリーズ、=LOVEなど、大人数アイドルグループを中心に担当する振り付けユニット。「遊び心を振付ける」のポリシーの下、思わず真似したくなるキャッチーさと、一目で印象に残る視覚的インパクトを持つ振り付けが特徴。

日向坂46「絶対的第六感」
日向坂46「絶対的第六感」では、ハウスステップを取り入れた軽快なダンスを見せ、グループの新しい一面を披露した。

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