リアルを大切にして生きる令和のアイドル像
「でんぱ組.incは、どこをとっても平成のアイドルだったんだと思います。それが終わったんだなって」
2025年、16年の活動に終止符を打った〈でんぱ組.inc〉について、プロデューサーのもふくちゃんは感慨深げにそう語る。しかし、終わりがあれば始まりもある。現在、もふくちゃんが手がける〈きゅるりんってしてみて〉(以下きゅるして)は、令和という新たな時代の幕開けを象徴するアイドルグループだ。
「〈きゅるして〉は、私にとって本当に新しい挑戦なんです。そもそも彼女たちには、私がこれまでプロデュースしてきた〈でんぱ組〉や〈虹のコンキスタドール〉みたいな体育会系!みたいなものを良い意味であまり感じなくて。アイドルであることとイコールで自分を大切にして生きるということを大事にしているんだなと感じています。
だからこそどう調理したら面白くなるかがわからず、最初は悩みました。でも逆に、その令和っぽい女の子のリアリズムをそのまま打ち出したら面白いんじゃないかと思って。女の子という存在の持っている、明るい面、暗い面など色々な側面をホラー映画のようなMVでうまく表現していくって方向性が見えてきた。それで考えたのが、“カワイイ・リアリズム”というコンセプトなんです」

かくして見出された方向性は、2023年にワンマンライブで発表された「ツインテールは20歳まで♡」によって揺るぎないものになったという。
「メンバーの楽屋で、今日は誰がツインテールにする?っていう流れがよくあるっていう話を聞いて、めちゃくちゃかわいいな!と思って(笑)。そのエピソードをマネージャーから聞いて、ツインテールがテーマの楽曲を作ってくださいと清竜人さんに伝えて作ってもらったのが、あの曲でした。“これこれ!”と思いましたね」
女性プロデューサーを育てることが今後の目標
メンバーのリアルな人間性を表現し、偶像としてのアイドルを刷新すること。それこそがもふくちゃんにとってプロデュースなのかもしれない。〈でんぱ組〉の代表曲「W.W.D」がアイドル界に衝撃を走らせたのも、メンバーのプライベートな黒歴史を歌い上げてしまったことにある。
「確かにそれはそうなんですけど、でんぱ組のメンバーは二次元のキャラクターにこそ憧れていたんですよ。“この子はこういうこと言わない”とか“この子はこの髪形しかしない”とか、徹底していました。どちらかというとアイドルに憧れているというか、二次元に憧れてる子が多かったから。その点、〈きゅるして〉は、もっとリアルなんですよね」
「そこが女の子のファンに受けてる理由かな」ともふくちゃんは言い添えるが、確かに、彼女がプロデュースするアイドルは女性ファンが多い印象がある。意識していることはあるのだろうか。

「〈でんぱ組〉を始めた頃のアイドルって、女性の私から見た時、衣装も歌詞もダサかったんですよ。朝のお化粧をするときに元気が出るようにとか、聴いてるだけで可愛くなった気がするとか、生活のどこに「役にたつ」かを考えて私たちも選んでもらわないといけない。だから特に衣装に関しては、女の子にかわいいと思ってもらえることを意識しています。かわいくてスタイルが良く見えるようにとか。コスメを選ぶように、私たちも選んでもらわなければいけない。
当時は、女性のアイドルプロデューサーなんて私しかいなかったですが、今はちょっとずつ増えてきて、そういうアイドルこそ女性に受けることが、もう如実に表れてきています。その流れをもっと推し進めるためにも、アイドルだけでなく、さらにたくさんの女性プロデューサーを育てることが、今後の私の目標。大それたことを言えば、それによってまだまだ99%が男性社会である芸能界を、少しでも女性目線から楽しくできればなと思っています」
もふくちゃんが選ぶ1曲
作詞と作編曲をシンガーソングライターの清竜人が手がけた、2023年リリースの楽曲。MVではメンバーがツインテール姿で登場。「メンバー全員がツインテールにできるように清竜人さんにツインテールをテーマに作っていただきました」