道すがらにも趣を感じる先斗町の老舗割烹
「夜の先斗町通(ぽんとちょうどおり)から店に向かう路地に入ると、喧騒が少しずつ遠のき、穏やかな気持ちになっていく。その感じがいいんです」
美食を求めて世界中を旅し、京都にもたびたび訪れる山田英季さんが挙げてくれたのは、道すがらにも情緒を感じる先斗町で65年続く割烹だ。現在の店主は、2代目の川那辺行繁さん。店を始めた母の後を継いでカウンターに立ち、かれこれ45年以上、京都の普段着の料理を作っている。

「どの品にも、技術に裏打ちされた懐の深さを感じます。中でも、胃袋にしみるのは、料理を支える京都らしいだしの味。だし巻きは、どこの店にもあるお惣菜ですが、ここのは、箸を入れた瞬間、だしがジュワッとしみ出る。おいしさは格別です」
卵液の約半分量をだしが占めるだし巻きは、名物の一つ。水分が多く、巻きづらいはずだが、川那辺さんは、年季の入った卵焼き鍋で、3分とかからず、焼き上げる。
もう一つの名物、釜めしもまた、ご飯にしみただしがごちそう。具材をだしとともに炊いて旨味を出したもの、焼いてのせたもの、どちらもいいが、「いつもご主人と世間話をしながら、あれもこれもと頼むから、それこそ、釜めしを前に胃袋の余白を探すハメになってしまいます」。



