京都の「余白のある店、余白のある人」。紫竹〈Elbereth〉

素晴らしい空間やサービスだって、提供する側にも受ける側にも気持ちにゆとりがないと楽しめない。私たちにほかでは得難い体験を与えてくれる名店の主たちはなおのことだろう。紫竹に潜む2つのギャラリー〈STARDUST〉〈Elbereth〉店主に聞いた、店のあり方と、“京都の余白”。

photo: Yoshiko Watanabe / text: Mako Yamato

美に包まれて感性をほどく、紫竹に潜む、2つの場所

星屑という名の店〈STARDUST〉が、街中から少し離れた紫竹に現れたのは2015年のこと。店主、清水香那さんが築100年の長屋町家を自分たちも加わり改装。経年美に気づかせてくれる、美に満ちた世界を作り上げた。

そこに並ぶのは器、茶葉、洋服、ジュエリー……、清水さんが“ビューティフルシングス”と呼ぶ、琴線に触れたものだけ。その空間は小さくても輝く星のように光を放ち、世界中から足を運ぶファンを生み出した。

それから8年を経てかつての西陣織の機織り工房だった建物を舞台に、新たなギャラリー〈Elbereth〉を開いた清水さん。

「ここでも空間を作るうえで大切にしたのは、空間に宿る記憶や時間。總(そう)神社という小さな神社の裏鳥居に面していて、参道からつながるような場所だけに、外の空気を感じられる雰囲気にもしたくて」。ガラス屋根から降り注ぐ光が空間の表情を刻々と変え、内と外との境界が曖昧になるような、不思議な感覚をもたらす。

京都〈Elbereth〉内観
高い天井は織屋建てと呼ばれる町家の特徴。国も時代も超えた空間が印象的。

「ここでの展覧会は、より作家の世界観に浸れるものに」とも清水さんは言う。ホワイトキューブにはない場の力強さが、作品の存在を際立たせ、観る者を作家の世界へと引き込んでいく。感性を揺さぶられる感覚とともに、心を自由にしてくれる場でもある。

京都〈Elbereth〉内観
その時々で変わる趣も魅力。草木染めや古布を用いる〈十葵〉の衣布の展示。

余白のある店主〈STARDUST〉〈Elbereth〉の清水香那さんが語る、京都の余白

心を豊かにリセットするため、一人足を運ぶ日常の非日常

忙しく日々を過ごす中で、自分自身にチャージする時間を持ちたくて足を運ぶのは〈京都府立植物園〉。一番のお気に入りは裸足になって寝っ転がり空を見上げられる場所だけど、詳しいことは秘密で。ほかにも針葉樹林を歩くのも気持ちがいいし、山野草のある〈植物生態園〉エリアも好き。とりわけ可憐な花が咲く春は毎週足を運んでしまうほど。

京都〈京都府立植物園〉の針葉樹林
〈京都府立植物園〉の針葉樹林
針葉樹の林では絶滅危惧植物のレバノンスギやブラジルマツ、生きた化石と呼ばれるメタセコイア、園内で最も背の高いセンペルセコイアなど約50種を見ることができる。山野草に出会えるのは〈植物生態園〉。約15,000m2もの敷地に、日本各地に自生する植物や、古来栽培されてきた園芸植物を、その地域ごとにエリア分けし、約1,000種類が植栽されている。

一人になりたいときに向かうのは、静かな朝の大徳寺塔頭(たっちゅう)〈龍源院〉。枯山水庭園がすっと非日常に導いてくれるのです。

京都〈龍源院〉庭園
4つの枯山水庭園を持つ〈龍源院〉
臨済宗大徳寺派の総本山であり、茶の湯とのゆかりも深い大徳寺。〈龍源院〉は境内に20以上ある塔頭のうち、室町時代に創建された歴史を持つ。清水さんがとりわけ好きというのは、楕円の苔島が印象的な「一枝担(いっしだん)」。ほかに重森三玲の弟子、鍋島岳生による「東滴壺(とうてきこ)」、室町時代の作庭家・相阿弥の作と伝わる「龍吟庭(りょうぎんてい)」、阿吽(あうん)の2つの石からなる「滹沱底(こだてい)」があり、それぞれ異なる趣を漂わせる。

京都の「余白のある店、余白のある人」。三宅八幡〈鈍考/喫茶 芳〉

京都の「余白のある店、余白のある人」。紫野〈kankakari〉

京都の「余白のある店、余白のある人」。清水五条〈池半 分室〉

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