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伝統の味を引き継ぐ餃子の名店。広島〈清ちゃん〉

日本各地で見つけた餃子専門店。メニューはほぼ餃子と飲み物という店を取材してきました。独りでは生み出せない継承されてきた味。

Photo: Tetsuya Ito / Text: Michiko Watanabe

心尽くしのもてなしと
餃子で元気をもらえる店。

すぐ横のビルに、でかでかと「ソープランド」と書かれた看板。赤い暖簾の〈清ちゃん〉は、歓楽街のど真ん中にあった。56年も歴史を刻んできた、たった8席の店の女将・千鶴子さんは、毎朝6時半には店に来て仕込みを始める。粘りが出るよう2度挽きした豚肉に、刻んだ高知のニラと青森のニンニクを混ぜ込み、特注の薄い皮で包んでいく。

広島 餃子 清ちゃん
この小さなカウンターが癒やしの社交場だ。餃子にロウソクを立ててケーキ代わりに誕生日を祝う人も多いとか。

「ほんなら、焼こか」。ラードを染み込ませた鉄のフライパンに6人前48個を一気に並べて蒸し焼きに。パチパチッと音がしてきたら蓋を開けて、クイッ、クイッとフライパンを回す。

結構な重さだろうと思われるが、動きは軽やかだ。焼いている間にも電話がひっきりなしにかかってくる。予約のノートを広げて、「12月22日、8人やね。大丈夫よ」「うーん、どう頑張っても今日はムリや。遠方から来てくれてるのにごめんね」。返事はいろいろだ。

そうこうするうちに餃子が焼き上がる。目の前には、たっぷりのモヤシの和え物と青ネギの入ったタレが置かれる。

広島 餃子 清ちゃん
餃子は8個入りで450円。写真は6人前48個。観音ネギはどんどん追加を。自家製ラー油は好みで。

まずは、そのまま1個。カリッ、ホロッと繊細な口当たり。2個目はおすすめ通り、観音ネギという青ネギ入りのタレにつけ、「ねぎポケット」と呼ぶ餃子のくぼみにネギとモヤシをのっけてパクリ。タレとモヤシの酸味でいくらでもいけそう。

「どお?おいしい?皮は生きとるけん、焼きは難しいんよ」。

軽妙なトークも餃子の味の引き立て役だ。