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ジャズの名演は特別なステージではなく、日常に。音楽家・トクマルシューゴが語るジャズ

今、ミュージシャンが一番夢中な音楽、それはジャズかもしれない。ロック、ヒップホップ、R&B……音楽家は、その魅力をどう捉えているのだろうか。音楽家・トクマルシューゴにおすすめの3枚とともに大いに語ってもらった。

photo: Wakana Baba / text: Shunsuke Kamigaito

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アメリカの路上で出会った名演

プログレッシブロックにハマっていた中学生の頃、好きになったアーティストたちの背景にジャズがあると知って自分でも聴き始めました。そこから現地でジャズギターを学びたいと考え18歳で渡米。その先で僕は、路上の名もないプレーヤーたちが圧倒的な技術で演奏する姿を見て感銘を受けたんです。

マッコイ・タイナーやチック・コリアなど、レジェンドたちのカジュアルなライブを間近で観ることができたのも貴重な経験でした。そんな思い出もあって、ジャズの名演は特別なステージではなく、路上やライブハウスといった日常で起こっているのだと思っています。

トクマルシューゴが選ぶ、おすすめの3枚

Q1:オールタイムベストは?

『Half Moon Bay』Bill Evans

ビル・エヴァンスの名盤として知られる『Portrait in Jazz』と彼が最期を迎える中間くらいに録音された作品。彼は後期になるにつれて演奏がアグレッシブになっていくのですが、ここでは程よく明るさが残っていて、僕にとってちょうど心地よい演奏なんです。ストレートなキメが多いところも大好きです。

Q2:昨年一番聴いたのは?

『Forever Forever』Genevieve Artadi

ルイス・コールとのユニット・Knowerでも知られるシンガー、ジェネヴィーヴ・アルターディのソロアルバム。オルタナティブロックにジャズやフュージョンを接続した作品です。ブラジル出身のギタリスト、ペドロ・マルチンスをはじめとして新鋭ジャズ界隈の重要人物を多く起用していて新鮮さを感じます。

Q3:これからジャズを聴く人へのおすすめは?

『Live in Comblain-La-Tour, August 1, 1965』John Coltrane

『Live in Comblain-La-Tour, August 1, 1965』John Coltrane
1965年のライブを収録した作品。名プレーヤーたちによる即興の探り合いからじわじわと緊張感が高まり、そのまま激しい音のぶつかり合いに突入していく。これを聴くと漫画『BLUE GIANT』で描かれていた熱さを思い出すんです。各楽器の動きにフォーカスすれば、繰り返し楽しむことができると思います。

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