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イラストレーター・竹田嘉文の愛用品と部屋。古い家具から水栓まで、選び抜いた愛用品が心地いい部屋を作る

思い出が詰まった家具や、長く使い続けてきた日用品。愛するものが並ぶ部屋ほど幸せな場所はない。イラストレーターの竹田嘉文さんが建てた家もしかり。ストイックな目で選び抜いた愛用品が、眺めも居心地もいい部屋を生み出している。

photo: Taro Hirano / text: Masae Wako

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ヴィンテージ家具も
武骨な金物も似合う、
ストイックな空間

ヴィンテージハウスを自分で造ろう。そう思って家を建てた。東ドイツやオランダの工業製品が好きで、理想の空間は、モダニズム建築を牽引したドイツの教育機関〈バウハウス〉の校舎や学生寮。

イラストレーターの竹田嘉文さんにとってヴィンテージハウスとは、「復刻版のモダン家具のような、どこかに懐かしさが残る空間。暮らすうちに白壁やドアがいい感じに汚れ、10年、20年後に古い家具と相性がよくなるような家」である。

自身で設計プランを考えて工務店に施工を依頼したその家は、延床面積約90m2の木造2階建て。階段を上がると天井にドイツのヴィンテージ照明がついたホールがあり、両開きの扉を開ければダイニング&リビングが現れる。ポツリポツリと配されているのは、マルセル・ブロイヤーやW・H・ギスペンといったモダニズムのデザイナーによる家具。それらのストイックなデザインを引き立てているのが、自ら選んだドアや金具、壁の色などのディテールだ。

「ドアは既製品ではなく、昔の建物でよく使われていたポリ化粧板で特注しました。経年変化した時の色や質感を確かめたくて、あらかじめ同じ素材で棚を作って数ヵ月使ってみたんです」と言うから、その思い入れたるやただ事ではない。照明や水栓金具、スイッチなどのパーツも自力で探し、いい色の金具がないとなれば、好みの白スプレーで塗ったりもした。

「にぶい白やアイボリーなど同系色の重なりが好き。例えばドア回りは、壁と扉と枠材の白が程よくズレるよう、サンプルを取り寄せて組み合わせを考えました」

住み始めて1年半。家具や照明だけでなく「生活の手垢でいい具合に汚れてきた」ドアや金具もまた、心地いい部屋を作る愛用品だ。

イラストレーター・竹田嘉文/東京 自宅 キッチン
2階キッチン。階段室に面した壁を隅切りのガラスにし、その下にL字カウンターを設置。天板はメラミン材。ル・コルビュジエの集合住宅〈ユニテ・ダビタシオン〉を参考にした。

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