ブルータスが考える写真幸福論

作原文子の、
とっておきたい写真のはなし

PR 2023.10.16

「好きな写真を、日常の風景に」

「プリントされた写真には、パーソナルな思いや記憶をより深く鮮やかに乗せられる気がします」と話すのは、人気インテリアスタイリストの作原文子さん。自分で撮影した写真を日々の生活空間に取り入れる楽しみについて、語ってもらった。

プリントすることで自分と写真の距離が近くなる。

1 窓のないキッチンの壁に、窓の写真をディスプレイ。ショールームのキッチンスペースに掛けた額装写真は、写真家、映像作家の奥山由之氏の作品。さまざまな家の不透明なガラス窓を外から撮影したシリーズだ。「キッチンの窓から向かいの家の窓を眺めているイメージ。写真の中の色に合わせて、淡い色彩の器や花をスタイリングしました」。
2 「好きなお皿にプリント写真を何枚か置くだけで、その人にとってのアートプレートになる。器と写真の色を合わせたり、植物を添えたりしてもいいですね」。
3 テーブルに板やトレーを置き、その上に写真を並べるのも簡単な飾り方。「手に持った時の質感やモノとしての存在感もプリントの魅力です」

「写真って、プリントして〝形〞にすることで日常になると思うんです」手のひらサイズの色鮮やかな写真をテーブルに並べながら、インテリアスタイリストの作原文子さんがそう話す。シンプルで居心地のよいこの部屋は、実は家具のショールーム。定期的に行う家具のレイアウト変更に合わせ、作原さんがスタイリングを手がけた空間だ。よく見ると壁にも棚にも、青空や建物の写真がさりげなく飾られている。その多くは、今年6月にデンマークのコペンハーゲンを旅した作原さんが自分のスマートフォンで撮影し、〈富士フイルム〉のスマートフォン用プリンター「instax Link」で出力したもの。「コペンハーゲンは大学卒業後に初めての海外旅行で訪れた町。姉が20年以上住んでいることもあり、何度も足を運んだ大好きな場所なんです」
 いつも訪ねる店、大切な知人の家、行くたびになぜか撮ってしまう街角のゴミ箱。写っているのは2023年の街並みだけれど、作原さんにとっては、過去の幸せな記憶とつながる景色であり、自分の原点に立ち返らせてくれる光景でもある。「この場所、昔は文房具店があったんだよね……なんて、写っていないものに思いを馳せることも含めて、プリントされた写真には、パーソナルな気持ちや温度を乗せられる気がします。どうしてかはわからないけれど、色彩も理由の一つかもしれません。スマホの画面で見るよりも、プリントにした方が色も質感もリアルに感じる。色彩で記憶が蘇ってくることもよくあります」
 自宅にも親しい写真家たちの作品を飾って楽しんでいるという作原さんは、日常空間にアートとしての写真を取り入れることを提案するプロジェクト〈マウンテンモーニング〉の活動も長く続けている。「リビングでも玄関でもいいのですが、いつも通る場所に好きな写真が飾ってあって、風景として目に入ってくる。そういう瞬間が日々の活力になるし、ふとした時に背中を押してくれると思うんです」
 では具体的に何から始めたらいいのだろう? 作原さんは、自分で撮った写真をプリントして飾るのが、最初の一歩として最適だと言う。
「例えば、小さめにプリントして瓶の中やボウルなどの器に入れてみる。マスキングテープで壁に貼るだけでもいい。1枚だと寂しい時は、雑誌の切り抜きなど質感の違う紙モノと重ねて留めると存在感が出ますよ」
 壁やパネルにたくさん並べて貼る飾り方もすぐ真似できそうだし、部屋の雰囲気によっては、モノクロでプリントしてもカッコいいはず。「プリントの余白に撮影した日付や場所を書き込んだり、メッセージを書いてポストカードのように送ったりするのもいいですよね。そうやって手をかけることができるのも、〝モノ〞としての写真ならでは。手に持った時の質感や嵩かさみたいなものも、愛着につながる気がするんです。感覚でも向き合うことで、写真と自分の距離がぐっと近くなる。この楽しさが広がるといいなって思います」

BENEFITS

作原文子が考える、
プリント写真の良いところ。

  • 壁に貼る、棚に飾る。日常に取り入れやすい。
  • 思い出や幸せな感情が、より鮮明に蘇る。
  • 色彩や手触りなどでも楽しむことができる。

Profile

作原文子
インテリアスタイリスト
さくはら・ふみこ/岩立通子に師事した後、1996年に独立。モノの佇まいを大切にするスタイリングで、雑誌や広告、テレビCMや映画美術でも活躍。
www.mountainmorning.jp/
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