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暮らしに欠かせない、異国で集めた色とりどりの品々

朝目覚め、ベッドで日の光に包まれる。手間をかけてランチを作り、丁寧に淹れたコーヒーで小休止。家にいる時間は最高の贅沢だ。リビング、キッチン、ベッドルーム、レコードや本、家具と道具、住む場所と機能。いつもより長く家にいられるのだから、家について、ライフスタイルについて考えてみる。

Photo: Satoshi Nagare / Text: BRUTUS

ちりばめるのは、体に染み込んだ色。

「文字通り100の物件を見て回りましたが、玄関を入ってすぐ、トップライトの光を浴びてピンときました」

インドに生産工場を構え、アパレル雑貨を販売する〈ルシファーリサーチ〉代表の神真美さんが悩みに悩んで選んだ住まいは、高台に立つ4階建てのアパルトマン。朝方から夕刻まで日が入り、グリーンがすくすく育つ110㎡の箱が気に入った。購入した11年前に一度、それから試行錯誤を経て昨年、2度目のリノベーションを完成させた。

居住空間で余計な日用品が目に入らないよう、改築で廊下に収納を設えた。東向きのベランダではグリーンが快適そうに朝日を浴びる。中央はジャン・プルーヴェのスタンダード・チェア。
購入の決め手になった、天窓から日が差す玄関。自然光の下にはオーストラリアの先住民・アボリジニのドット・ペインティングを。中央はコートジボワールのセヌフォ族によるスツール。
築20年のマンションの一室を購入し、2度改築。2部屋の壁を取り払い生まれた大きなリビングに、真美さんが旅先で目にした「色」や、敬愛する作家の家具がくまなくレイアウトされている。食卓はシャルロット・ペリアンのフリーフォームテーブル。

「3LDKだった家を、初めのリノベーションで壁の高さやキッチンの位置を変えて2LDKに。部屋はゲストルームとベッドルームに分けたんですが、ゲスト用は使う機会がそれほどなく、もったいなく思えてきて。テキスタイルやアート、プロダクトなど、世界中で作られるさまざまな色を一望したくて、1LDKにしました」

広々としたリビングを見渡せば、赤、黄、緑……と、ビビッドな色味のアイテムに目が移る。ブランド〈ヌキテパ〉の洋服作りなど、数々の色に囲まれ、体験してきた真美さんは、自らの住まいにも彩りを取り入れる。

友人とパーティを楽しむ時はまずアームチェアに腰かけアペリティフ。イエローの絨毯は宿泊していたインドのホテルでインスパイアされて現地で購入。部屋のテーマ「エスニックミックス」は雑貨やアートだけでなく、バナナの木でも演出する。
配管が通っているため取り除けず、四角く巨大だった右奥の支柱は、柔らかな印象に、と円柱に改装。手前のリビングの色味はモロッコ・マラケシュで宿泊したホテルの一室を参考に。ディープグリーンのラグは現地で探して購入し、持ち帰った。

「生産地のインド、展示会を開くパリ、ニューヨーク。プライベートの旅を加えたら、1年で数ヵ月ホテルに泊まっていることも。仕事半分、趣味半分ですが、チェックイン時にはできるだけほかの客室も見せてもらって、色使いやインテリアを参考にしています。ラグとか器とか、客室に置かれていたものを現地で探して、買って帰ることもありますよ」

色に加えて、暮らしに欠かせないのはピエール・ジャンヌレやシャルロット・ペリアンなどの作家のプロダクト。同じインドでものを作る真美さんは、彼らが家具だけでなく、都市計画まで手がけたチャンディーガルにも足を運んだ。

「今から60〜70年前に、異国からインドを訪ねてものを作る苦労は計り知れません。私は特にペリアンが好きで。国も時代も異なる要素を調和させるクリエイションと、自由な生き方に憧れがあります。大好きな人たちが作ったものを、コーヒーを飲みながら見渡す瞬間が、一番幸せな時間です。