ちりばめるのは、体に染み込んだ色。
「文字通り100の物件を見て回りましたが、玄関を入ってすぐ、トップライトの光を浴びてピンときました」
インドに生産工場を構え、アパレル雑貨を販売する〈ルシファーリサーチ〉代表の神真美さんが悩みに悩んで選んだ住まいは、高台に立つ4階建てのアパルトマン。朝方から夕刻まで日が入り、グリーンがすくすく育つ110㎡の箱が気に入った。購入した11年前に一度、それから試行錯誤を経て昨年、2度目のリノベーションを完成させた。



「3LDKだった家を、初めのリノベーションで壁の高さやキッチンの位置を変えて2LDKに。部屋はゲストルームとベッドルームに分けたんですが、ゲスト用は使う機会がそれほどなく、もったいなく思えてきて。テキスタイルやアート、プロダクトなど、世界中で作られるさまざまな色を一望したくて、1LDKにしました」
広々としたリビングを見渡せば、赤、黄、緑……と、ビビッドな色味のアイテムに目が移る。ブランド〈ヌキテパ〉の洋服作りなど、数々の色に囲まれ、体験してきた真美さんは、自らの住まいにも彩りを取り入れる。


「生産地のインド、展示会を開くパリ、ニューヨーク。プライベートの旅を加えたら、1年で数ヵ月ホテルに泊まっていることも。仕事半分、趣味半分ですが、チェックイン時にはできるだけほかの客室も見せてもらって、色使いやインテリアを参考にしています。ラグとか器とか、客室に置かれていたものを現地で探して、買って帰ることもありますよ」
色に加えて、暮らしに欠かせないのはピエール・ジャンヌレやシャルロット・ペリアンなどの作家のプロダクト。同じインドでものを作る真美さんは、彼らが家具だけでなく、都市計画まで手がけたチャンディーガルにも足を運んだ。
「今から60〜70年前に、異国からインドを訪ねてものを作る苦労は計り知れません。私は特にペリアンが好きで。国も時代も異なる要素を調和させるクリエイションと、自由な生き方に憧れがあります。大好きな人たちが作ったものを、コーヒーを飲みながら見渡す瞬間が、一番幸せな時間です。