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食べる

あんこ歳時記 :9月、10月のあんこ菓子

雛祭りには草餅、彼岸にはぼた餅、端午の節句には柏餅……。日本には、一年を通して、無病息災や健康長寿を願うたくさんの行事があり、あんこ菓子はそうした行事や季節と密接につながっている。そもそもあんこの材料、小豆は、赤い色が邪気を祓うとされ、古くから縁起が良いとされてきた食べ物。さらに、意匠や用いる材料などにも由来や意味があり、そこには先人の願いが込められている。歴史や由来を知って口にすれば、いつものあんこ菓子がもう一つ、味わい深いものになるはず。

Iillustration: Yumi Uchida / Text: Yuko Saito

あんこ歳時記(秋)

9月:長月

長寿を願って菊の菓子。豊作を祝って月見団子。
秋到来でグッと菓子が華やぐ。

9日は重陽の節句、別名・菊の節句、栗節句。節句の前夜、菊の花に綿をかぶせて一晩置き、夜露が染み込んだその綿で肌を拭い、健康長寿を願う“着せ綿”という行事がある。

この時期には、それを菓銘としたものや、菊の意匠の生菓子、栗の菓子が並ぶ。中秋の名月は月見団子、お彼岸はおはぎと、行事にちなんだ菓子が増える。

おはぎ(ぼた餅)
秋の彼岸〈おはぎ(ぼた餅)〉/かつて宮中でぼた餅を萩の花と呼んでいたのが、おはぎになった。秋の彼岸はおはぎ=お萩、春の彼岸はぼた餅=牡丹餅と呼び分けるようになったともいう。
菊の生菓子
重陽の節句〈菊の生菓子〉/重陽の節句は、菊を飾ったり、菊の花びらを浮かべた酒を飲んだりして長寿を願う行事で、菊の菓子もその一つ。花弁を一枚一枚表現した練り切り製をはじめ、薯蕷饅頭も菊の意匠に。

11月:霜月

多産なイノシシにあやかって、病気になりませんようにと、
亥の日に餅を食べる。

旧暦10月の亥の日に餅を食べると病気にならない、という古い言い伝えにちなんだ菓子が、亥の子餅。多産なイノシシは、かつては豊かさの象徴だったという。

11月に催される茶席には、その亥の子餅と、織部饅頭を茶菓子とするところも。そのほか、秋の風物詩である紅葉狩りを意匠とした菓子、京都などでは銀杏餅も並ぶ。

亥の子餅
旧暦10月(現在の11月)の亥の日〈亥の子餅〉/イノシシの子を形や焼き印で表した菓子で、店、地方で仕立てはさまざま。『源氏物語』にも登場する古い菓子。小豆、大豆、大角豆、栗、柿、ゴマ、糖を材料としたとする文献も。