若い街娼の女の子を
足をケガしている恋人が
おぶうシーン
ヒモ同然で仕事がない男の子は、娼婦として働く恋人に頼って生きています。でもその職業柄、彼が嫉妬心から苦しむ様子も垣間見える。このカップルはお互い身動きが取れないほどに、どん詰まりの状況なのです。
だからこそ、終盤のこのシーンで、女の子をおぶい、そしておぶわれる、というなにげないけれど軽快な2人の姿に大きな解放感を感じるんです。
その破滅的な状態はレオス・カラックスが描く、ドニ・ラヴァンとジュリエット・ビノシュのようであり、2人が心を交わすさまはまるで映画『夫婦善哉』の人情喜劇のよう。
本作にとって、人情味を感じられることは大切なポイント。孤独なレンガ職人たちの会話の中にも、“クリスマスにはワインを2本開けて一日中起きていられないようにするんだ”と語る、切ない場面があったり。すべての映像がみずみずしく、血が通っているんです。

また、監督は明言していませんが、作品の中にはところどころにフィクションがある。カメラワークをとっても、被写体を追いかけていく画は少なく、話者の顔を正面で抜いたカットの連続で会話を見せたりする。物語が先行し、手法から自由なこのスタイルには憧れを抱きます。