アフロフューチャリズムとクィア
『ザ・メモリー・ライブラリアン「ダーティー・コンピューター」にまつわる5つの話』は、ミュージシャンとしてグラミー賞に10回ノミネートされ、俳優としても『ムーンライト』などの話題作に出演するジャネール・モネイが、満を持して刊行した小説家デビュー作だ。
3rdアルバム『ダーティー・コンピューター』の世界観をベースに、5人の作家とコラボレーションした5つの短編が収録されている。
“新しい夜明け”なる当局の監視体制が敷かれた未来社会を舞台にして描かれるのは、黒人女性やノンバイナリーの少年といったマイノリティが、愛や自由を求めて生きる姿。そこには、分断が進むアメリカ社会へのメッセージが込められていると見て間違いない。
本作のように、アフリカ系の人物をめぐる物語をSF的想像力によって描き出すことを、“アフロフューチャリズム”と呼ぶ。女性作家としてその先駆と目されるのが、オクティヴィア・E・バトラーだ。
代表作『キンドレッド』では、70年代のロサンゼルスで暮らしながら、なぜか南北戦争以前のアメリカ南部へタイムスリップを繰り返すことになったデイナを通して、奴隷制度の残酷さが問われる。
モネイはデビューアルバム『The ArchAndroid』におけるバトラーの『Wild Seed』の影響を公言しており、『ザ・メモリー・ライブラリアン』の謝辞にも彼女の名前が刻まれている。本書は、そうした先達から授かったアフロフューチャリズム的な想像力と、彼女らしいクィアネスが混じり合う、革新的な一冊と言えるだろう。

