品のある“不穏さ”が重く突き刺さるから
大好きだけど2度目をためらうのがイ・チャンドン作品。重厚なテーマと終始漂う不穏な空気からか、観ると心身にダメージを食らってしまって。
特に衝撃が大きいのが、1人の女性を中心に「罪と罰」を掘り下げた本作。終盤、度重なる悲劇に見舞われた彼女が、教会で神への猜疑心を爆発させるシーンは脳裏から離れません。画(え)で伝える部分と台詞(せりふ)による説明的な要素をバランスよく取り入れた品の良い構成は、悔しいほど素晴らしいんですが、なかなか2度目は手が伸びません。
ちなみにもう一つ浮かんだのが、原一男監督が自身の愛人を追ったドキュメンタリー『極私的エロス 恋歌1974』。監督の子を身籠(ご)もった彼女の出産シーンの生々しさに、20歳の自分は放心状態に。作品のために身を削る姿勢は圧巻ですが、1度でお腹いっぱいです(笑)。
