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星野概念

小山田浩子『工場』の古笛と牛山佳子とその兄

名前:小山田浩子『工場』の古笛と牛山佳子とその兄

病状:私はただ一生懸命に今までやってきたつもりだが、私の思う一生懸命さというものは実は何の価値もなかったのだ。それが証拠に今の体たらくだ。働きたくない。

備考:何を作っているのかわからない巨大工場で働く3人を通し、働くことや生きることの不安や不条理を描く。作家デビュー作の表題作ほか2編収録。新潮社/1,800円。

吉本ばなな『マリカのソファー』のマリカ

名前:吉本ばなな『マリカのソファー』のマリカ

病状:いつもペインは痛かった。痛い係はペインだった。
マリカが代わってあげるよといっても、気づくといつのまにかペインが代わっていた。

備考:多重人格を有する8歳のマリカ。少女とジュンコ先生の交流、旅での癒やしの物語。『マリカのソファー/バリ夢日記』として取材旅行記も収録。幻冬舎文庫/533円。

宗田理『ぼくらの七日間戦争』の瀬川卓蔵

名前:宗田理『ぼくらの七日間戦争』の瀬川卓蔵

病状:あのとき、柿沼のおやじさんがかばんから手を離して、ロビーの方を見た時間は三秒か四秒だ。その間に、わしは隣の電話機のところにいて、同じかばんとすりかえたんだ。

備考:あのとき、柿沼のおやじさんがかばんから手を離して、ロビーの方を見た時間は三秒か四秒だ。その間に、わしは隣の電話機のところにいて、同じかばんとすりかえたんだ。

住野よる『君の膵臓をたべたい』の僕

名前:住野よる『君の膵臓をたべたい』の僕

病状:どういった対応をするのが正解なのか、まるで分からなかったけれど、僕は空いた左手で僕の首にかかっていた腕を解いた。彼女の体を前に押しやると、呼吸も鼓動も消えた。

備考:膵臓の病気で余命いくばくもない高校生と、彼女の病気を知ったクラスメイトの「僕」の物語。2016年本屋大賞第2位、7月28日映画公開。双葉文庫/667円。

いとうせいこう「鼻に挟み撃ち」の(自分が鼻だと自覚している) 私

名前:いとうせいこう「鼻に挟み撃ち」の
(自分が鼻だと自覚している) 私

病状:マスク男の話を聞くうち、ああ私こそが彼の鼻だと私には突然、了解されたのだった。

備考:街頭で演説をするマスク男と、それを聞く「鼻」の私。ゴーゴリや後藤明生を引用しながら構築されるマジックリアリズム。2014年芥川賞候補作。集英社/1,200円。

中島敦『山月記』の李徴

名前:中島敦『山月記』の李徴

病状:覚えず、自分は声を追うて走り出した。無我夢中で駈けて行く中に、何時しか途は山林に入り、しかも、知らぬ間に自分は左右の手で地を攫んで走っていた。

備考:中国の古典「人虎伝」を題材に、詩への執心と捨てきれぬ自尊心から、虎に変身してしまった男の運命を描く。1942年発表の短編で、著者代表作。新潮文庫/400円。