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星野概念

古市憲寿『平成くん、さようなら』の平成くん

名前:古市憲寿『平成くん、さようなら』の平成くん

症状:平成が終わった瞬間から、僕は間違いなく古い人間になってしまう。(中略)時代を背負った人間は、必ず古くなっちゃうんだよ。

備考:平成の終わりとともに安楽死を望む主人公と、それを受け入れられない恋人。2人の関係を通して、生きること、死ぬことの意味を問う。文藝春秋/1,400円。

小川洋子『薬指の標本』のわたし

名前:小川洋子『薬指の標本』のわたし

症状:彼のまわりにも、まだたくさん活字が残っていた。彼の足元でわたしは、無防備な小動物になってしまったような気分だった。

備考:飼っていた文鳥の骨、楽譜に書かれた音、やけどの跡など、思い出の品々が持ち込まれる標本室。その主とわたしの静かで奇妙な愛の情景を描く。新潮文庫/430円。

高山羽根子『オブジェクタム』の中野サト

名前:高山羽根子『オブジェクタム』の中野サト

症状:ふつうに考えて、関係ないような見当はずれな言葉でさえ、その集まったものが人間の脳みそみたいに精神とか、意志、論理なんかを持っているように見える場合がある

備考:秘密基地でカベ新聞を作る祖父と、それを手伝う小学生の自分。大人になり、記憶の断片をつなぎながら、とある謎を追う表題作ほか2編。朝日新聞出版/1,300円。

保坂和志『ハレルヤ』の私

名前:保坂和志『ハレルヤ』の私

症状:人は心に過る感触に言葉を与えようとして、感触をだいぶ薄めたり、場合によってはそれの逆になる言葉を手にする、この言葉は、(中略)窮屈な考えにがんじがらめだ

備考:作家夫妻のもとで18年8ヵ月を過ごした片目の猫は、命が死んでも生きると教えてくれた。生と死などを描いた、心揺さぶる4つの短編を収録。新潮社/1,500円。

村上春樹『風の歌を聴け』の僕、鼠、女

名前:村上春樹『風の歌を聴け』の僕、鼠、女

症状:秋が近づくと、いつも鼠の心は少しずつ落ち込んでいった。カウンターに座ってぼんやりと本を眺め、僕が何を話しかけても気の無さそうなとおりいっぺんの答えを返すだけだった。

備考:海辺の街に帰省した僕と鼠と女の子とが過ごした1970年の夏。ビールと音楽と文学のある青春の一片。群像新人賞を受賞した著者デビュー作。講談社文庫/450円。

小川洋子『ひよこホテル』の男

名前:小川洋子『ひよこホテル』の男

症状:「しかし男はこうした思いのあれこれを、少女に向かって言葉にはしなかった。返事がもらえないからではなく、お互い喋らないでいる方が平等だ、という気がしたからだ。

備考:表題の『海』や『ひよこホテル』など、少し歪だが静謐で温かな物語たち7編をまとめた短編集。収録作品に関する著者インタビューも収録。新潮文庫/430円。

スタインベック『ハツカネズミと人間』のレニー

名前:スタインベック『ハツカネズミと人間』のレニー

病状:「ハツカネズミって、とってもちっちぇんだ(中略)かわいがってると、すぐにおらの指をかむんだ。それで、ちょっと首をひねると、もう死んじまう。とってもちっちぇからなんだよ」

備考:体形も知恵も対照的なレニーとジョージ。カリフォルニアの農場を転々とする、2人の渡り労働者の友情と哀歓、夢と悲劇を描く。大浦暁生訳。新潮文庫/430円。

吉本ばなな『どんぐり姉妹』のどん子、ぐり子

名前:吉本ばなな『どんぐり姉妹』のどん子、ぐり子

病状:どうして人はあたたかい言葉や優しい仕草が嬉しいんだろう、それは私がまだ肉体の段階では獣の側面を持っているからなんだ、そう思う。

備考:両親の死、祖父の介護などの苦しい時間を乗り越えた姉妹は、ネットの中の居場所「どんぐり姉妹」を開き、たわいのない言葉で人々の心を解く。新潮文庫/550円。

井上ひさし『手鎖心中』の栄次郎

名前:井上ひさし『手鎖心中』のの栄次郎

病状:(略)しかし、せっかく、……勘当される。婿に入る。女に狂う  と順に来たんだ。追い出されるところまで行ってみようじゃないか」と、おれはいった。

備考:絵草紙の作者として名を上げたいが才はない。栄次郎は、自ら勘当や手鎖の刑を受けて、茶番によって一旗揚げることを企てる。直木賞受賞作。文春文庫/590円。

松尾スズキ『クワイエットルームにようこそ』の佐倉明日香

名前:松尾スズキ『クワイエットルームにようこそ』の佐倉明日香

病状:「あーあー。ゲロでうがいしちゃってるよ」客席の一番前の席の男が、足をだらしなく投げ出して、見たまんまを垂れ流す。

備考:恋人と大喧嘩の果てオーバードーズで精神科病院の閉鎖病棟に運び込まれる主人公。その再生までを描く、深刻かつコミカルな作品。芥川賞候補作。文春文庫/448円。