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高山羽根子『オブジェクタム』の中野サト

名前:高山羽根子『オブジェクタム』の中野サト

症状:ふつうに考えて、関係ないような見当はずれな言葉でさえ、その集まったものが人間の脳みそみたいに精神とか、意志、論理なんかを持っているように見える場合がある

備考:秘密基地でカベ新聞を作る祖父と、それを手伝う小学生の自分。大人になり、記憶の断片をつなぎながら、とある謎を追う表題作ほか2編。朝日新聞出版/1,300円。

村上春樹『風の歌を聴け』の僕、鼠、女

名前:村上春樹『風の歌を聴け』の僕、鼠、女

症状:秋が近づくと、いつも鼠の心は少しずつ落ち込んでいった。カウンターに座ってぼんやりと本を眺め、僕が何を話しかけても気の無さそうなとおりいっぺんの答えを返すだけだった。

備考:海辺の街に帰省した僕と鼠と女の子とが過ごした1970年の夏。ビールと音楽と文学のある青春の一片。群像新人賞を受賞した著者デビュー作。講談社文庫/450円。

愛煙家を気取れないいまだからこそ、 クールに紫煙をくゆらす登場人物に魅せられる。

喫煙している本人はもちろん、受動喫煙の危険性が叫ばれ、喫煙者たちには世知辛いご時世のいま、「たばこってカッコいい」などと言ってもいられない。しかし、『ナイト・オン・ザ・プラネット』のウィノナ・ライダーをはじめ、数々の名作を魅力的なヘビースモーカーたちが彩ってきたのも事実。たばこ抜きには成立しないものもあることにご理解を。

スポーツという枠があり、人間の普遍は可視化された。

五輪3連覇、国際試合13年無敗、哲学とプーシキンを愛読。ロシアの偉大なレスラー、アレクサンドル・カレリンは、かつてそんなコメントを残したという。スポーツは肉体を酷使する。ゆえに言葉を求めるのだと。それを丁寧に紡いだ本は、時にスポーツの芯まで届く。読まないのは損だ。硬骨のスポーツライター、藤島大さんが案内する。


スポーツの名著。こう呼び得る一冊には、いくつかの前提があるという。まずは書き手の愛。

奇妙な生き物たちを愛し、異形に愛される作家が編む、誌上アンソロジー。

「根底では、異質な他者との出会いを求める気持ちと拒絶する気持ち、警戒、恐怖と興味がない交ぜになって蠢いているのではないでしょうか。他者の向こう側に潜む未知の世界には妄想をかき立てられるし、そこには潜在意識の投影という屈折を経て出会う、まだ見ぬ自分自身がいるかもしれない。同時に、日々生きている実感が摩耗していくような今の社会にあって、自分以外の生き物の存在を通して失われた実感を取り戻そうとしているの

暗くてもネガティブでも読みたくなる、“実録私小説”とは?

近年 “実録私小説”なるジャンルの本が次々と出版されている。家族との軋轢や鬱病など、テーマはどれも人には話しづらいこと。彼らはなぜあえて書くのか、なぜ私たちはそれに惹かれるのか。実録私小説を書いた花田菜々子さんと、ジャンルの象徴的な一冊『夫のちんぽが入らない』の書籍編集を担当する高石智一さんに聞いた。

小川洋子『ひよこホテル』の男

名前:小川洋子『ひよこホテル』の男

症状:「しかし男はこうした思いのあれこれを、少女に向かって言葉にはしなかった。返事がもらえないからではなく、お互い喋らないでいる方が平等だ、という気がしたからだ。

備考:表題の『海』や『ひよこホテル』など、少し歪だが静謐で温かな物語たち7編をまとめた短編集。収録作品に関する著者インタビューも収録。新潮文庫/430円。

幻想小説? いやいや。これはもう 「読むフリークライミング」でしょう。

小説の楽しみにふたつある。「視る」楽しみと「よじ登る」楽しみだ。「視る」楽しみといっても「イメージを喚起する記述のある小説」という意味ではない。小説は筋の構造やできごとの布置、登場人物たちの対立図式を提示したり、発展させたり、ときにはひっくり返してみせたりする。僕たち読者はその模様、パターンの広がりや変化を、小説の頁から距離を取って俯瞰して、わくわくしたり意表を突かれたりする。読んでいるあいだ、つ