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戌井昭人

「校長先生はご乱心だ」

私は憤りを感じております。先程の奇術ショーだが、奇術師の方が袋の中からヒヨコを出すネタをやっている最中、誰かが大きな声でタネをばらしたろ、挙句、皆は大笑いしたよな。あのさ、あの方のテクニックがいくら稚拙だったといえ、先にタネをばらすなんて最低の行為だぞ、あのような場合は黙って見守るのがマナーだろ。もしネタバレが生じても、無かったことにしてやるのが優しさなんじゃねえのか。本当に、君たちには幻滅したよ

「風が吹くと儲かる商いって なんだっけ?」

 強風、突風、疾風、巻きあがって目にホコリ。いろんな風が吹くたびに、わたしは、いつも乱れてしまうの。でもね、困ってばかりもいられないから、逆に、たち向かうことにしたの、そりゃ大変ですよ、右も左もわからなくなることだってあるし、どこまで進んだのかわからなくなることだってあります。いつの日か、そよ風が吹いてくることを信じて、今日も、風に吹かれてます。その答えは、風の中にあるとは思えません。

「落し物を拾いながら、色々なものを失っていく」

 向かっている方向を確認するつもりなんてありません。方向指示を出されたとしても、全部反対に行ってやるつもりだ。そもそも到達地点なんて、最初っから無いんだよ。ゴールなんて煙の中なんだぜ、到着したと思ったところで、そこは霞んでなにも見えないはずだ。そして必ず落とし穴があるんだ。だから、わたしは走り続けるの、すべての指示を無視して、走り続けるのだ。わたしの未来に、方向指示なんて無用なんだべさ。

「悪魔、濡れた髪に欲情す」

 昼間に悪魔がやってきたよ。玄関で折りお菓子を持って立ってたよ。呼び鈴を何度も押してきたけれど、私、シャワーを浴びてたから、すぐ出れなかったんだ。それで濡れた髪で玄関に出たら、悪魔、なんだか興奮しちゃって、鼻息が荒くなって、近所迷惑だったよ。悪魔の鼻息、凄いんだ、地面に吹き降ろされた鼻息で土煙がたってたもん。でもって要件は、近所に引っ越してきたから挨拶しにきたんだって、結構律儀なんだね、悪魔って。

「地球がまわるから、放り出されちゃうのよ」

 青空があって街があった。ビルの隙間でセミが鳴く。猫が地べたにへばりつき、人間があぶら汗をたらしながらヘタレこんでいた。高みにのぼって、すべてを手に入れた気分になってみたけれど、コレは俺のモノではないしアンタのものでもない。まして神のモノでもなけりゃ、街をとり仕切る極悪人のモノでもない。地球がまわって街が傾いていく、無用な我々は、斜めになった地面を滑っていく、掴まるものはない、そして放り出されてし

「タワシで健康になりましょう」

 タワシはいいよ、タワシはすばらしいよ、ワタシはタワシでこするんだ、あっちこっちを、どこでもこするよ、床もタイルも天井も、道路のアスファルトだって、電柱のコンクリートだってこすっちゃう、もちろん、背中もお腹も脚も腕も、お股の部分だって、ゴッシゴッシやっちゃうの、赤くなるまでこすっちゃうんだ。そんでもって身体が熱くなってきましたら、大きな声で歌をうたうのさ、イチ、ニー、サンで、チーパッパ、タワシはワ

「いじわるね、あとひときれよ」

 カブトムシが食っちまったんだ、とあの人は言う。庭の井戸で水を汲んで、頭からかぶって戻ったら、このありさまだったんだ、とあの人は言う。あの人は、わたしがスイカをこのうえなく好きなのを一番知っているはず。わたしが子供のころ、スイカと心中未遂をおかしたことだって知っているのに、それなのにあの人は、乱暴にスイカを食べたあげく、たった一切れだけ残して、このありさまよ。さらにカブトムシが食べたなんて嘘をつい

「褒められる前に、褒めちゃうよ」

 ないないない、それはない、噛みちぎった耳をポイと吐き捨て、テンポを鈍らせ進んでいくよ。いつまで待っても、電車は来ないし、明日も来ないだろう。でもね、手を叩いていれば、目の前の線路は延びていくはずだ。先はまだ長いし、終わりはいつまで経っても見えてこないだろう。でもね、止まっちゃ駄目だ。転んでも何事も無かったように起き上がれ、そんでもって、明日のために手を叩きながら進んで行くのだよ。

「空に向かっておったてて、雲の隙間へ」

元気ですか、ヘニャってないですか、落ち こんでる場合じゃないぞ、「はやく突っ込ん でこいよ」と青空が叫んでいるよ、トロける 雲がセクシーな声で「カモ~ン、カモ~ン」 って手招きしているよ、ホラ、たまらない気 分になってきただろ、興奮してきただろう。 だから、とっととおったてて、ソレ握ったら 操縦だ。コントロールは慎重にお願いします よ。雲の吐息を感じつつ、太陽に照らさ

「捨てたら拾ってまた捨てろ」

 コステロ、コロスッテヨ、ステゴロ最強、エルヴィス寒山、拾ってラッキー、花形拾得、難産至極、鼻が高いのよ、戦って、刺されたりして、苦の果てに産み出したけれど、時代が流れてゴミになりました。でもね、また拾って、踏ん張って、捨てられて、あげく、わたしは必要とされてないの? なんて思えてきちゃうけれど、心配すんなよ、違うんだよ、ゴミの山の中にこそゴミらしからぬものがあるのだから。