キーワード

2008年

【屈辱の町に香るバター茶】内モンゴルを味わうための語彙力とは。

 ドスの効いた怪しげなビル。「馬記 蒙古肉餅」はその五階にある。その店名からそこはかとなく漂う異国のマッサージを経由した性サービスの気配。いや、それはおのれの欲望の写し鏡か。マーキーモウコローピンと読むらしい。マーキーモウコローピン。読んだ端から覚えようという気持ちが冬の夜風に散っていく。

 それは高田馬場にあった。高田馬場には嫌な思い出しかない。大人計画を旗揚げした25、6歳の頃、この町のハン

物の履歴書

日本の折り紙に魅了された、ジョナサン・アンダーソンが、その構造をバッグに落とし込むという突飛なアイデアを思いついた。一見シンプルだが、異形のパーツをパズルのように合わせ、立体的に構築できるのは、精密なパターンカッティングの賜物である。1846年よりレザーグッズファクトリーとして続くロエベの革職人と、若きクラフト好きデザイナーの見事なコラボレーションが《PUZZLE》バッグとして結実した。

地球の脆弱性を語る作品を、日本で見る意味。| アイザック・ジュリアン

〈森美術館〉の開館15周年を記念した展覧会『カタストロフと美術のちから展』が開催中だ。出展アーティストの一人、ロンドンの映像作家アイザック・ジュリアンは語る。「地球の脆弱性を世界に知らしめた東日本大震災。その日本で、この作品を展示することにとても意味があると感じています。“どうしてあんなことが起きてしまったんだろう”。多くの人々が抱えるトラウマや傷。この展覧会を見ていると、そんな気持ちが、少しずつ

僕はダメな人たちと同じ目線で、ダメな人たちを描きたいと思ってる。

 数年前、園子温監督が「80年代の自主映画はすさまじかった。例えば——」と言って教えてくれたのが、藤田容介(当時は秀幸)監督だった。藤田容介は1987年に『虎』でトリノ映画祭8ミリ部門グランプリを受賞し、自主映画界を席捲して、その後〈大人計画〉の舞台映像を手がけたり、『グループ魂のでんきまむし』を監督したりしてきた。ところが、いわゆる商業映画として発表した作品はこれまで2008年公開の『全然大丈夫