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アカデミー賞

その時、彼女たちは出生の秘密を探る旅に出た。

今年、現時点で最も素晴らしいと思った作品のうち2つが、“出世の秘密”をめぐる物語だった。
『イーダ』の舞台は1960年代初頭のポーランド。戦争孤児として修道院で育てられたアンナは、ある日、院長から親類がまだ生きていることを知らされる。唯一の血縁、おばのヴァンダのもとを訪ねた彼女が、そこで耳にしたのは、知られざる衝撃の事実だった。「あなたはユダヤ人。本名はイーダよ」。両親の墓参りをしようにも、第二次

心の中で思い描いてきたものが、東京で一つの輪につながったみたいだ。

川内倫子の写真集、『ILLUMINANCE』を手に、スパイク・ジョーンズが東京にやってきた。この写真集は最新作『her/世界でひとつの彼女』の最初のインスピレーション源で、LAのARCANA書店で出会って以来、ずっとスパイクの案内灯となり映画を導いてきた。たくさんの付箋が貼られた写真集を差し出し、「サインしてください」と言うスパイク。彼の作品へのアプローチにシンパシーを感じていたと言う川内倫子が迎

職人気質の男が選んだシーズン3とは。

 近年、アメリカのドラマで『ハウス・オブ・カード陰謀の階段』ほど話題を振りまいた作品はほかにないかもしれない。ワシントンDCを舞台に繰り広げられる復讐劇は、ハリウッド最高のスタッフとキャストを取り揃え、一流映画に匹敵するスケールとクオリティを誇る。だが、『ハウス・オブ・カード』がここまでの社会現象となったのは、むしろその放送形式にある。同作は大ヒットコメディ映画『テッド』などを手がけたMRCという

すべてを失い、どんなに絶望しようと、それでも生きていく。

 時節柄どうしてもアカデミー賞絡みの話題になるけれど、今年の作品賞候補作には、ある共通のテーマを持つものが多くラインナップされている。『キャプテン・フィリップス』『ゼロ・グラビティ』『それでも夜は明ける』『ダラス・バイヤーズクラブ』……この4作品はどれも“いきなりとんでもない事態に巻き込まれるけどへこたれない物語”、言い換えれば“絶望を生き抜く物語”だ。
 中でも受賞が有力視されている『それでも夜

役者が快楽を得るための最も過激な方法―肉体改造について。

 以前、日本の某大物女優に「芝居の快楽とは?」という質問をした時のこと。彼女はいかにも大物女優らしい笑みを浮かべ、いかにも大物女優らしく紅茶をズズズとすすった後、いかにも大物女優らしく毅然と答えた。あなた、それは“我を忘れる”ということよ  。確かに演者にとって、自分ではない何かに変貌し、忘我の境地へと辿り着く瞬間は、何にも代えがたい至福の時に違いない。
 役者が我を忘れるための、最も過激で、最も

サウジアラビア初の女性監督が描いた希望。

映画館の設置が法律で禁じられている国、サウジアラビア。女性による自動車の運転が禁止されるなど、女性の行動を制限する慣習が今も残るこの国で、女性初の映画監督によるみずみずしい一作『少女は自転車にのって』が誕生した。ハイファ・アル=マンスール監督に話を聞くのは、同じアラブ諸国の一つ、エジプト・カイロで幼少期を過ごした作家の西加奈子さん。西さんが「素晴らしかった」と感想を伝えると、監督はたちまち相好を

セレブ願望の10代を描いた感想とは?|ソフィア・コッポラ

「娘を持つ母親としては保守的になるわね(笑)、今のティーンを見ると」。ソフィア・コッポラにはいくつもの顔がある。思春期の若者の心情を繊細に描かせたら随一のアカデミー監督としての顔はもちろん、世界的なトップバンドの一つとなったフェニックスのリーダー“トマ”の妻、マーク・ジェイコブスが手がけてきたルイ・ヴィトンのミューズ、そして2人の小さな娘の母。年を重ねるごとに自身の世界を広げていくソフィアが、新作