キーワード

アカデミー賞

まばゆい青春劇から傑作ホラーのリメイクへ。| ルカ・グァダニーノ

前作『君の名前で僕を呼んで』では、アメリカからやってきた年上の青年に恋をする、イタリア人少年の葛藤をまばゆい陽光の中に描いた。ところが一変。ルカ・グァダニーノ監督の新作は、1977年に公開され、鮮烈な映像と音楽でいまだ多くの人を虜にしてやまないホラー『サスペリア』の再構築だ。彼もまた、その恐怖劇を幼少期に観て、虜になった一人だという。25年以上前、まだ映画監督を志す頃から温めていた念願の企画。完成

観たくても観られない。 そんな時代を生きてきた。| 大林宣彦 (映画監督)

あんな人物の映画は観たくないと思っても、観ればその人を深く理解できるので、積極的に観るようにしている。だから「観てない映画は?」と聞かれても、思い当たるものがない。そう話す大林宣彦監督には、しかし観たいと思っても映画を観ることのできない時期があった。
「戦後、被占領期は映画を観られませんでしたからね、GHQ(連合国軍総司令部)が観せてくれるもの以外は。GHQ最高司令官のマッカーサーが、日本人にアメ

評伝と一緒になった、リンチの自伝が発売

 他人(クリスティン・マッケンナ)の書いた自分の〈評伝〉と、自分自身が書いた〈自伝〉を交互に組み合わせた、いってみれば隣接ジャンルのカップリングという、知る限りでは初めての試みがイギリスのキャノンゲイトから刊行された。デイヴィッド・リンチ『RooM to DReaM(大文字小文字は表記のまま)』である。分身テーマ好きなリンチのひとつの分身ごっこと捉えていいかもしれない。
 自伝部分には、自伝しか語

アイルランドと日本、島国に育った2人のアーティストが語る、海の話、歌の話。

6年前、海に消えたお母さんはアザラシの妖精・セルキーだった。アイルランドの神話を基に、幼い子供たちが母の残した歌を頼りに冒険へ繰り出すアニメーション『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』。本作で母・ブロナーの声を吹き替え、日本語版主題歌の訳詞と歌唱を手がけたEGO-WRAP
PIN’の中納良恵とトム・ムーア監督が「海とは?」「歌とは?」について語った。

中納良恵 作品を観て、まず絵に引き込まれま

映画に革命をもたらす、白熱してスリリングな、ドラムの跳躍。

 なんて驚異的な作品だろう、本年度アカデミー作品賞ほか、最多4部門を制覇した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』は。アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督が『ゼロ・グラビティ』の撮影監督、エマニュエル・ルベツキと作り上げた、全編ワンカットと見紛う圧巻の映像。初めから終わりまで切れ目のないショットを作り出すため、動きもタイミングも寸分の狂いなく組み立てられた、芝居のアンサンブル。かと思

その時、彼女たちは出生の秘密を探る旅に出た。

今年、現時点で最も素晴らしいと思った作品のうち2つが、“出世の秘密”をめぐる物語だった。
『イーダ』の舞台は1960年代初頭のポーランド。戦争孤児として修道院で育てられたアンナは、ある日、院長から親類がまだ生きていることを知らされる。唯一の血縁、おばのヴァンダのもとを訪ねた彼女が、そこで耳にしたのは、知られざる衝撃の事実だった。「あなたはユダヤ人。本名はイーダよ」。両親の墓参りをしようにも、第二次

職人気質の男が選んだシーズン3とは。

 近年、アメリカのドラマで『ハウス・オブ・カード陰謀の階段』ほど話題を振りまいた作品はほかにないかもしれない。ワシントンDCを舞台に繰り広げられる復讐劇は、ハリウッド最高のスタッフとキャストを取り揃え、一流映画に匹敵するスケールとクオリティを誇る。だが、『ハウス・オブ・カード』がここまでの社会現象となったのは、むしろその放送形式にある。同作は大ヒットコメディ映画『テッド』などを手がけたMRCという

すべてを失い、どんなに絶望しようと、それでも生きていく。

 時節柄どうしてもアカデミー賞絡みの話題になるけれど、今年の作品賞候補作には、ある共通のテーマを持つものが多くラインナップされている。『キャプテン・フィリップス』『ゼロ・グラビティ』『それでも夜は明ける』『ダラス・バイヤーズクラブ』……この4作品はどれも“いきなりとんでもない事態に巻き込まれるけどへこたれない物語”、言い換えれば“絶望を生き抜く物語”だ。
 中でも受賞が有力視されている『それでも夜