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信州

Kinonedo|中里萌美

 〈きのね堂〉のお菓子がおいしいよ、と教えてくれたのはとある人気菓子店の店主。食べてみると油脂に頼らず、焼きのしっかりした、とても力強いクッキーだった。
 都内のマンションの一室で、〈きのね堂〉こと、中里萌美さんは一人黙々とお菓子を焼いている。食育が盛んな高校に通い、農業や自給自足に憧れたこともあったが、「自分が選んだ素材と向き合いながら、一人でお菓子を作るのが性に合っている」と、この形。
「何も

栗が好きでたまらない、藤森先生の秋の栗時間。|藤森照信

 いわゆるケーキ系はそんなに好きじゃないです。だってあれ、ガーンとくるからね。一大決心がいる。和菓子をちょっとつまむくらいが、気分転換にちょうどいい。
 僕はとにかく栗が好きでね。戦後、信州の田舎で育ったものだから、おやつってごく限られていて、栗と柿とクルミ、あと母の作る干しイモくらいしかなかった。栗は中でも高級だった。秋は落ちているのをそのまま食べてましたけどね。ほかの季節用にもゆでて干して保存

深沢七郎『樽山節考』のおりんと辰平

名前:深沢七郎『楢山節考』のおりんと辰平

病状:本当に雪が降ったなあ! と、せめて一言だけ云いたかったのである。辰平はましらのように禁断の山道を登って行った。

備考:貧しい部族の掟を守り、胸の張り裂ける思いで息子は、母をおぶって楢山へ捨てに行く。1957年、当時42歳の作者デビュー作。ほか3編を収録。新潮文庫/460円。

シャトー・メルシャン

 今でこそ「日本らしさ」が当たり前に謳われる日本ワインだが、「桔梗ヶ原メルロー」の歩みは、手探りでその道を拓く歴史そのものだった。「ワインは人がつくる」。〈メルシャン〉の元醸造責任者で「現代日本ワインの父」といわれる浅井昭吾さんの思想の下、1976年、長野県塩尻市桔梗ヶ原地区に棚仕立てでメルロを植栽。89年に初リリースされた「シャトー・メルシャン 信州桔梗ヶ原メルロー'85」は、リュブリアーナ国際

平 勝久・瑞穂/STUDIO PREPA

 スタジオ“プレパ”の由来は、プレパレーション。生活道具の支度部屋という意味だ。平
勝久さん・瑞穂さん夫婦は、作家でもあるがプロダクトメーカーでもある。
 標高700m、アルプスを望む南信州の中川村へ5年前に移住した。2人で営む工房では、デザインや制作のみならず、ガラスの溶解炉そのものまでレンガを積んで手作りしたというから驚きだ。
「作家ものとか日用品とか言うより、“人が作ったものだよ”くらいのフ

料理

 小津の登場人物は始終何かを食べている。あるいは、食べることばかり考えている。戦前の映画、例えば『一人息子』では、母親が幼い子供を叱りながら石臼でそばの実を挽いているシーンがある。信州を表現し、かつ母親の苦労が込められている。時代が進み、上京して成長した息子が母親に食べさせるのは、夜鳴きそばだ。当時は珍しかったラーメンを「おつゆが旨いんですよ」と得意げに振る舞う。この食にまつわる変化だけで、ストー