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文学賞

華やかさと日常を結ぶ「おやつの味」がするケーキ。|平松洋子

 学生時代に初めて訪れてから40年近く。サヴァランというお菓子を初めて食べたのも〈こけし屋〉さんでした。サヴァラン専用の、ラム酒とシロップを染み込ませるための粗い生地を使って、トップに生クリームとカスタードクリーム。ほんわり軟らかいのに、ぴちっと決まっているこの味がすごくいいんです。洋酒を使った洋菓子って、お酒が非日常的で華やかな存在だった時代の、新しいものを取り入れるエネルギーや夢を感じさせてく

島田雅彦

「人間は主として2種類に分けられます。効率的にお金を稼ぐ人と“新しいお金”を作ってしまう人。前者はビジネスマンと呼ばれ、後者はアーティストと呼ばれますが、私の父はお金を稼ぐのがへたで、自分もそうになるに決まっていると幼い頃から思ってきました。というわけで、貨幣経済とグレた付き合い方をすべくアーティストになったわけです」
 そう語るのは、小説家の島田雅彦さんだ。実際、2010年に刊行された著書『悪貨

村田沙耶香

 小説家としてデビューし、『コンビニ人間』で芥川賞を受賞した後も、コンビニエンスストアでのアルバイトを続けていた村田沙耶香さん。小説を書くこととアルバイトという2つの仕事について、どんなふうに捉えているんですか?
「純文学がお金にならない世界だということはわかっていたので、原稿料や印税のことは考えず、そこに縛られずに小説を書きたいと思っています。コンビニのアルバイトはきっちり働いただけのお金が入っ

穂村 弘

 会話体を取り入れた作品で“短歌のニューウェーブ”を巻き起こし、ニンマリさせるエッセイや対談本でのチャーミーは天井知らず。翻訳や評論でも活躍する現代短歌の第一人者にして、どこまでも柔らかな“ほむほむ”という愛称もお似合いの穂村弘さん。お金、どうですか?
「お金持ちになったら床暖房がついた家で、猫を膝に乗せて大きなテレビで映画を観たい、と言うと笑われるんですが、僕は、お金については子供の感覚のままみ

自分の存在を懸けた「本物の体験」とは何か。|服部文祥

 学生時代に山登りにのめり込んでしまった者が企業に就職して生きていくのは難しい。自分の命さえもてあそぶほどの自由を登山で知ってしまうと、時に滅私して組織のコマになり、人生を切り売りして、サラリーを稼ぐ生活がバカらしくなってしまうからだ。一方で、子供の頃から所属してきた日本の社会を切り捨てて、仙人のように生きていく覚悟もない。
 20代の最初の頃、山登りに身を費やした若者が、自由を捨てずに生きていく

文筆家・星野道夫を語る|池澤夏樹

星野道夫が亡くなった後、彼の功績を伝えようと誰よりも役割を担い、果たしたのが、作家・池澤夏樹だった。星野が為した仕事の意味を都市に暮らす人々に伝えた紹介者。でも、なぜ、そこまで一人の男の人生に思いを馳せて、文章を重ねたのか? 文筆家としての星野について魅力を語る言葉の端々に、その答えが滲んでいた。

「もりもり食べたら、 突っ走っていきます」

 もりもり食べるよ。お腹が破裂するまで食べちゃうよ。動けなくなるまで食べるよ。トマトを頭の上に乗せて、フライドポテトを鼻の穴に突っ込んで、玉ねぎスライスを目に挟み、人参を耳の穴へ、フォークとナイフをズボンのポケットに突っ込んで、油の汁を顔に塗りたくり、右手にご飯、左手に肉の塊、気合を入れて立ち上がったら、店を飛び出す。すると、外で大きな猫が待っていて、わたし、襲われました。

『仲良くしてね!』

 ぶらりと入った本屋の雑誌コーナーで、たまたま目に留まったブルータスの表紙に、特集「男の定義」の文字が躍っていたら
……その文言を見ただけでビビッてしまい、いきおい傷ついて、落ち込んでしまいそうだ。もし自分が、男だったら。
 それでもめげずに雑誌を手に取り、パラパラめくった先に、あろうことか三十代の女の作家が書いた「男らしさとはなにか」についてのエッセイが載っていた日には、“そっ閉じ”必至である。

片岡義男と、2度目の週末の午後。

 作家・片岡義男がデビュー40周年を迎える。1974年、「白い波の荒野へ」でデビュー後、『スローなブギにしてくれ』『彼のオートバイ、彼女の島』『ボビーに首ったけ』に代表される角川文庫シリーズ(通称「赤背」)が全国の書店に並び、映画化作品もヒット。80年代初頭には一躍世に知れ渡る存在となった。
 その活躍の場は文学界のみにとどまらない。作家としての成長期には創刊されたばかりの『POPEYE』『BRU