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文学賞

【特別寄稿】スナックで思いきり酔って歌ってみたい | 吉本ばなな (作家)

水谷豊さんが歌っていた井上陽水さん作曲のこの曲を、私はスナックで思いきり酔って歌ってみたいと思う。キーが合わなくてもいい。情景を思い浮かべながら、懐かしみたい。
 
ほんとうはここで選ぶのは聖子ちゃんの「ガラスの林檎」にしようと思った。初めて恋をしてずっと相手にくっついていたい。それは欲でドロッとした気持ちではなくって、もっと清らかな何か…そんなことをたくさん表わしたあの詞と曲が今でも彼女の曲の中

幻想小説? いやいや。これはもう 「読むフリークライミング」でしょう。

小説の楽しみにふたつある。「視る」楽しみと「よじ登る」楽しみだ。「視る」楽しみといっても「イメージを喚起する記述のある小説」という意味ではない。小説は筋の構造やできごとの布置、登場人物たちの対立図式を提示したり、発展させたり、ときにはひっくり返してみせたりする。僕たち読者はその模様、パターンの広がりや変化を、小説の頁から距離を取って俯瞰して、わくわくしたり意表を突かれたりする。読んでいるあいだ、つ

比類なき“言葉の人”である男が、最も尊敬されるリーダーに選ばれるまで。| ウィンストン・チャーチル

2017年、ウィンストン・チャーチルを主人公に据えた映画が相次いで2作公開された。『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(以下『ヒトラーから〜』)と『チャーチル ノルマンディーの決断』(以下『ノルマンディーの〜』)だ。前者でチャーチルを演じたゲイリー・オールドマンがアカデミー賞主演男優賞をとったうえ、彼に特殊メイクを施したのが日本人の辻一弘だったこともあり、日本でも大いに話題にな

文筆家・星野道夫を語る|池澤夏樹

星野道夫が亡くなった後、彼の功績を伝えようと誰よりも役割を担い、果たしたのが、作家・池澤夏樹だった。星野が為した仕事の意味を都市に暮らす人々に伝えた紹介者。でも、なぜ、そこまで一人の男の人生に思いを馳せて、文章を重ねたのか? 文筆家としての星野について魅力を語る言葉の端々に、その答えが滲んでいた。