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文学賞

幻想小説? いやいや。これはもう 「読むフリークライミング」でしょう。

小説の楽しみにふたつある。「視る」楽しみと「よじ登る」楽しみだ。「視る」楽しみといっても「イメージを喚起する記述のある小説」という意味ではない。小説は筋の構造やできごとの布置、登場人物たちの対立図式を提示したり、発展させたり、ときにはひっくり返してみせたりする。僕たち読者はその模様、パターンの広がりや変化を、小説の頁から距離を取って俯瞰して、わくわくしたり意表を突かれたりする。読んでいるあいだ、つ

「ゴシック」とは生き方の問題。 屈強な美意識で社会の虚構を穿つ。

『歌人紫宮透の短くはるかな生涯』という、すさまじい奇書がある。

これは1980年代を駆け抜けた天才歌人・紫宮透の作品と生涯を、彼自身の歌作や発言に加え、あまたの関係者たちの証言から繙いてみせた伝記  を、あくまで読者に紹介するという体裁の小説。要するに、紫宮透は実在しない。彼の歌作も、それを評する夥しい声も、それらを書き綴った伝記本も、すべては作者・高原英理ひとりの想像力が編み上げたもの。ところ

あまりにもヤバすぎて発禁状態? 衝撃の問題作、57年ぶりに復活!

日本を代表する小説家の一人として大江健三郎の名を挙げることに異論を差し挟む者はいないだろう。なにしろ日本人作家としては川端康成に続いてノーベル文学賞を受賞した人物なのだから。
 
受賞は1994年。理由は「詩的な想像力によって、現実と神話が密接に凝縮された想像世界を作り出し、読者の心に揺さぶりをかけるように現代人の苦境を浮き彫りにしている」から。しかしその前段に、猥雑な想像力によって禍々しい現実を

華やかさと日常を結ぶ「おやつの味」がするケーキ。|平松洋子

 学生時代に初めて訪れてから40年近く。サヴァランというお菓子を初めて食べたのも〈こけし屋〉さんでした。サヴァラン専用の、ラム酒とシロップを染み込ませるための粗い生地を使って、トップに生クリームとカスタードクリーム。ほんわり軟らかいのに、ぴちっと決まっているこの味がすごくいいんです。洋酒を使った洋菓子って、お酒が非日常的で華やかな存在だった時代の、新しいものを取り入れるエネルギーや夢を感じさせてく

島田雅彦

「人間は主として2種類に分けられます。効率的にお金を稼ぐ人と“新しいお金”を作ってしまう人。前者はビジネスマンと呼ばれ、後者はアーティストと呼ばれますが、私の父はお金を稼ぐのがへたで、自分もそうになるに決まっていると幼い頃から思ってきました。というわけで、貨幣経済とグレた付き合い方をすべくアーティストになったわけです」
 そう語るのは、小説家の島田雅彦さんだ。実際、2010年に刊行された著書『悪貨