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映画史

まだ観てないのは、 まだ辿り着いていないから。| 町山智浩 (映画評論家)

「まだ観てない映画が思いつかない」とは、インタビュー依頼時の第一声だ。映画評論家としてメディアで紹介した作品は2000本を超え、飯田橋界隈での映画少年時代から米国在住のいままでに観た映画となれば、それ以上。そんな町山さんの「まだ観てない映画」は「まだ辿り着いていない映画」である。では、“辿り着く”とはどういうことなのか?

「もともとは、アクションやホラー、怪獣、SF映画ばかりを観ていました。途中

観たくても観られない。 そんな時代を生きてきた。| 大林宣彦 (映画監督)

あんな人物の映画は観たくないと思っても、観ればその人を深く理解できるので、積極的に観るようにしている。だから「観てない映画は?」と聞かれても、思い当たるものがない。そう話す大林宣彦監督には、しかし観たいと思っても映画を観ることのできない時期があった。
「戦後、被占領期は映画を観られませんでしたからね、GHQ(連合国軍総司令部)が観せてくれるもの以外は。GHQ最高司令官のマッカーサーが、日本人にアメ

『仁義なき戦い』を手がけた伝説の男と、実録映画の後継者が対面。

 北海道警察の現役刑事が、覚醒剤に溺れ、悪事の限りを尽くした驚愕の実話。『日本で一番悪い奴ら』は、そんな日本の警察史上最大の不祥事といわれる事件を、綾野剛主演で映画化したピカレスクロマンだ。
 前作『凶悪』に続き、再び実録映画を手がけた白石和彌監督が、この日やってきたのは京都。『仁義なき戦い』シリーズなど、映画史に残る実録映画を生み出した伝説のプロデューサー、日下部五朗を表敬訪問するためだ。
「日

インド映画を背負う男に、死角はない。|アーミル・カーン

「観客を驚かせたい願望は強いね」と笑うアーミル・カーンは、新作『チェイス!』でもトリッキーな役柄で見参。人呼んで“Mr.パーフェクト”。エモーショナルな演技に、インド映画らしいエンタメ度爆発のアクション、ダンス……、称号通りの活躍だ。「マスコミは“ロマンスヒーロー”とか俳優を分類したがるけど、常に違う役の僕は分類不能。15年間出演作が全て成功したからついたニックネームさ。でも僕は完璧じゃない。人間

真面目と不真面目を行き来する、横断力にこそ男らしさは宿る。映画界の重鎮たちは、男である理由を教えてくれる。

 深作欣二監督は、言わずと知れた日本映画の巨匠。僕が学生時代にツテを頼って「学校へ映画の特別講義をしに来てくれないでしょうか?」と頼みに行ったら、2時間近くずっと巻きたばこを巻きながら無言でした。やけくそになって「俺は将来、自分の映画を作って映画監督になりたいんです!」と半泣きで訴えたら、「よし、わかった。俺が行くからには俺の映画を全部観とけ」と引き受けてくださった。そしたら、数日後、僕の安アパー

映画の中で人が実際に成長していくということ。

 映画の中で激しく喧嘩したからといって、実際に2人が憎み合っているわけではないし、誰かが死んだからといって、実際にその命が失われているわけではない。フィクションの力というのは嘘の力であって、現実に依存した時点でそれはフィクションの力を失ってしまう。でも映画の中で人は実際に成長する。仮に10日間の撮影であったとしても、人は10日分の成長をする。だから時として映画は、実際の成長を演出的に取り込んで、フ

サウジアラビア初の女性監督が描いた希望。

映画館の設置が法律で禁じられている国、サウジアラビア。女性による自動車の運転が禁止されるなど、女性の行動を制限する慣習が今も残るこの国で、女性初の映画監督によるみずみずしい一作『少女は自転車にのって』が誕生した。ハイファ・アル=マンスール監督に話を聞くのは、同じアラブ諸国の一つ、エジプト・カイロで幼少期を過ごした作家の西加奈子さん。西さんが「素晴らしかった」と感想を伝えると、監督はたちまち相好を

『エイリアン』や『ブレードランナー』に比肩するSF映画の金字塔、公開。

 "映画史に残る傑作"とか、"『エイリアン』や『ブレードランナー』に比肩するSF映画"とか、"『アバター』後の最も重要な3D作品"とか、どれだけ絶賛してもし足りないのが『ゼロ・グラビティ』だ。
 船外活動中にスペースシャトルが大破し、アウタースペースに取り残された乗組員2人のサバイバル劇。尺は91分、登場人物は2人(もっと言うと実はほとんど1人)と骨格は簡素ながら、圧倒的な観応えがあるのは、まず土