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光文社

死んでも帰らんと決意して上京しました。| 松本零士

B29の空爆と艦載機の機銃掃射。そして昭和20年の8月15日、あの日を実体験した最後の世代です。占領軍のるつぼも体験し、戦いに敗れることを心底まで味わいました。占領軍に身を売らねば家族や子供たちを生き延びさせることもできない人たち。敗戦という地獄を見て育ち、負けることがいかに悲惨ですさまじい体験なのか、幼いながらに心の底まで味わい、自分の心情の原点となりました。アメリカ兵は飴玉なんかを振り撒くけれ

奇妙な生き物たちを愛し、異形に愛される作家が編む、誌上アンソロジー。

「根底では、異質な他者との出会いを求める気持ちと拒絶する気持ち、警戒、恐怖と興味がない交ぜになって蠢いているのではないでしょうか。他者の向こう側に潜む未知の世界には妄想をかき立てられるし、そこには潜在意識の投影という屈折を経て出会う、まだ見ぬ自分自身がいるかもしれない。同時に、日々生きている実感が摩耗していくような今の社会にあって、自分以外の生き物の存在を通して失われた実感を取り戻そうとしているの

映画と文学の中間域を生み出した “暴走爺”が齢79歳にて再覚醒。

1950〜60年代、わが国のフランス映画ファンに符丁として、「アラン」と問いかけたとする。おそらく大半が(特に女性はためらいなく)影のある超美男俳優の「ドロン」と答え、映画監督の「レネ」と答えるのはよほどのマニアであったろう。さらに「ロブ=グリエ」となると皆無に近かったにちがいない。

アラン・ロブ=グリエが映画界と関係ができたのは、彼が脚本を書き、それをアラン・レネが監督した『去年マリエンバート

平山夢明

ヅカ石ヘド彦。誤記ではない。ヅカ石は、「元漫才師で今は主にグルメリポーターをやっているオーバーオールのデブ」。小説『反吐が出るよなお前だけれど……』では、「ラーメン屋〈中華コリーダ〉」を、彼がディレクターと取材のための試食に訪れる。もとより店員夫婦もただものではない。「コイカタオオメノブタマシ?」、そして、「どぶどろ? どぶどろのぶろどろ?」「どぶどろましましのどろどろましましぶろぶろ?」と、どこ

聖地を目指して無心で歩くスペイン巡礼の旅。|神田松之丞

 数えたら365日のうち360日働く休みのない生活。好きなことなので苦ではない。むしろ楽しい。ただ、二ツ目になりたての頃、同期とアジア各国へ足を延ばしたような自由気ままで開放的な時間はもう味わえないと諦めていた。そんな折、結婚することになり最後の長期旅行だと妻と一緒に選んだのが、カトリックの聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼。ひたすら歩いた2週間。疲労で体はガタガタだけど、無心になり自分