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芥川賞

【長野、仙台、大阪、小倉、津、そしてケニア。】そして、誰も皆無口で、ウガリを◯◯した。

芝居の巡業で、長野に行き、仙台に行き、大阪に行き、小倉に行き、三重の津にまで行った。「どこ行くの?」「津」。発するのに一秒かからないスピード感に満ちたこの町には、その名前にふさわしく一日しか滞在しなかった。芝居後、食べ歩きをする元気もなく、津の夜は終わったのだった。その土地に旅して、その土地のものを食えない。それは虚しい。仙台では牛タンを食べ、長野では蕎麦を食べた。津には、なんの思い出も残らなかっ

町屋良平『1R1分34秒』のぼく

名前:町屋良平『1R1分34秒』のぼく

症状:なにがわかる。おまえになにが?(中略)ワンツーを打てないボクサーのなにが? いつまでも右ストレートに脅威のないボクサーでいるぐらいなら、死んだほうがいい。

備考:自分の弱さ、その人生に厭きていたプロボクサーの主人公。駆け出しのトレーナーとの日々が心身を、世界を変えていく。2019年、芥川賞受賞作。新潮社/1,200円。

漫画やゲームを評論するブルボン小林と、小説を書く長嶋有。

「『ザ・マンガホニャララ 21世紀の漫画論』カバーの金氏徹平さんの作品は、僕の自宅に飾っているものです。今回使わせてもらうにあたって、題字を載せたり色をつけたりの改変も快諾してくれ、デザインのアドバイスまでしてくれ、本当に感謝しています。『私に付け足されるもの』のカバーは“地味な女シリーズ”と銘打たれた短編を収める、そんな本にこそ派手な服を着せるべきだ! と思ったので、人物画にしてほしい、絵の中の

【冷えた弁当の後は、ギャコックで】鍋にあふれる無限のチベット。

先日4本目の長編映画を撮り終えた。私は出自が演劇なので、映画と演劇の違いについてよく聞かれる。もちろん表現の違いは数限りなくあるが、映画と演劇には、飯の食い方が違うというのが大いにある。演劇は、だいたい昼過ぎに始まり、夜帰れる。なので朝昼晩、おのおの勝手に飯を食う。しかし、映画は、朝早いし、そうそう夜は帰れない。なので、皆で3食弁当を食う。これがきつい。しかも低予算の現場である。おかずの乏しい冷え

あまりにもヤバすぎて発禁状態? 衝撃の問題作、57年ぶりに復活!

日本を代表する小説家の一人として大江健三郎の名を挙げることに異論を差し挟む者はいないだろう。なにしろ日本人作家としては川端康成に続いてノーベル文学賞を受賞した人物なのだから。
 
受賞は1994年。理由は「詩的な想像力によって、現実と神話が密接に凝縮された想像世界を作り出し、読者の心に揺さぶりをかけるように現代人の苦境を浮き彫りにしている」から。しかしその前段に、猥雑な想像力によって禍々しい現実を

死にかけたアメリカを映し出す“普通の人たち”。| リン・ディン × 川上未映子

路上生活者、身体障害者、日雇い労働者、ドラッグ中毒者……。『アメリカ死にかけ物語』は、ベトナム生まれの詩人であり小説家のリン・ディン氏が、アメリカ各地を旅しながら、底辺に生きる者たちの声を拾い集めたエッセイ集だ。いわば“アメリカのB面”のドキュメントである同書が書かれた背景について、その日本版にエッセイを寄せた小説家の川上未映子氏を聞き手に迎え、リン氏に語ってもらった。

エンタツ・アチャコから知ってます、僕は。|糸井重里

エンタツ・アチャコ(横山エンタツ・花菱アチャコ)を聴いたのはいくつの時だっただろう。小学校に入る前かな。「むちゃくちゃでごじゃりまするがな」ってアチャコのギャグが流行ったんですよ。テレビなんてまだない時代。ラジオの時代です。
 
で、昭和30年代。僕が小学生だった頃。中田ダイマル・ラケット、夢路いとし・喜味こいし、秋田Aスケ・Bスケ。子供たちを含め漫才が爆発的に広まったんです。まだテレビ前夜。その

松尾スズキ『クワイエットルームにようこそ』の佐倉明日香

名前:松尾スズキ『クワイエットルームにようこそ』の佐倉明日香

病状:「あーあー。ゲロでうがいしちゃってるよ」客席の一番前の席の男が、足をだらしなく投げ出して、見たまんまを垂れ流す。

備考:恋人と大喧嘩の果てオーバードーズで精神科病院の閉鎖病棟に運び込まれる主人公。その再生までを描く、深刻かつコミカルな作品。芥川賞候補作。文春文庫/448円。

小野正嗣『九年前の祈り』の安藤さなえ

名前:小野正嗣『九年前の祈り』の安藤さなえ

病状:そのミミズは本物のミミズとちがって幼子のなかにあった感情や知性の土壌を豊かにしてはくれなかった。まったく逆だった。だからミミズが出てくるのを見ると恨みはつのった。

備考:引きちぎられたミミズのように大騒ぎする子を持て余すシングルマザーのさなえ。その胸にかつての言葉が蘇る。芥川賞受賞作。ほか3編を収録。講談社文庫/620円。

滝口悠生『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』の一平(私)

症状:過去から跳ね返ってくるのは、私がつくった過去ばかりで、そこにあったはずの私の知らないものたちは、過去に埋もれたままこちらに姿を見せない。
備考:2001年秋から11年春へ。初恋と東北へのバイク旅行とジミヘンのギターが織りなす、儚くもかけがえのない時間、記憶を巡る。芥川賞候補作。新潮社/1,400円。