キーワード

集英社

「掘っ立て小屋は今日も耐え忍ぶ」

 欄干から眺める川面にはボウフラ三匹飛んでいた。向こうにそびえ立つ煙突からはオレンジ色の煙が吐き出され、空から恐竜が降ってきて『ドカン』。屋根に落ちたよ。小屋の扉を開けると水色のドラム缶が転がってきて『ドボン』。川に落ちました。すると窓から薄っぺらのおっさんが飛び出してきて、ドラム缶にジャンプ、器用に体勢を整え、馬に跨る様な格好になって、川を『ドンブラコッコのコケコッコー』と下っていきました。

「遊ぶことばかりを考えて生きてます」

 朝起きたら、まずは何して遊ぼうか考えます。晴れていれば最高だけど、今日は少し曇り空、雨もふりだしそう。でも、遊んでばかりの身の上なので、天気のことなんて図々しく意見していたら罰が当たります。さてさて何して遊ぼう? 犬を追いかけまわそうか、洗濯物と一緒にぶら下がってゆらゆらしようか、ひよこと双六ゲームをしましょうか、わざと溝にハマって日がな空を眺めていようか。うーん、よし決定、今日はひよこ双六だ。

「悪い子なんていねぐねえぞぉ」

 もう許せねえや、ふざけた態度をとりやがって。僕も結構悪い子だというのは認めるけど、あいつらはもっと悪い子なんだ。こらしめてやらなくちゃならねえ。僕の名前は、ブルーひらの助、木製の剣、チャンカイスペシャルでダイヤモンドも真っ二つ、青いヒラリーノスーツは虫除けにもなるんだ。今日もライオンのように大地を走り、象のように体当たり、右も左も真っ暗闇の世界を、眩しい世界に変えてやるのが、僕の使命です。

「その回転、 ゆっくりだけど飛んできた」

 回転しながら空を飛んできたピザは、頭にぶつかって地面に落ちた。すべてはスローモーションだった。生きるか死ぬかの瞬間は皆がそうなるらしい。祖父は死ぬ前、バッティングセンターで150キロの球を打ち返した。サラミの嘆きが聞こえ、チーズの苦しみが湧きでてきた。向こうから必死に走ってくるネズミを蹴散らして、わたしのピザだ と叫び、バラバラになったピースを集めて箱に戻した。今宵、焼き直して食べるんだ。

「注意している本人が撃沈する」

 世の中は恐ろしいことばかり。気を抜くと災難が襲いかかってきます。それが何処からやってくるのか、見当がつきません。ですから常に気を張っていなくてはならないのです。けれども、四六時中気を張っているのは疲れてしまいます。では、どこで気を抜けばいいのでしょう? 風呂場? 便所? 寝床? しかし、そのような場所にも危機は忍び足でやって来ます。まったくもってパラダイスなんてどこにあるのかしら? 教えて頂戴。

「消えた握り部分を前にして」

 俺のシャベルの握り部分はどこに消えちまったんだ。これで温泉を掘り当てるつもりだが、一ヶ月前、電信柱にぶつかって腕が折れちまったんで、少し休んでたんだ。それで現場に戻ってみたら、握り部分がすっぽり消えちまってんの。お前は、狼が握り部分を咥えて国道を走っていたとか言うけど、狼が握り部分を何に使うんだ? 骨と間違えたのか? もし本当なら、狼とっ捕まえて解体して、足の骨を削って握る部分にしてやる。