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滝本誠

ルー・リードの股間、バナナの放つ影響力。

 ルー・リードの初来日コンサート、日時場所の記憶は曖昧ながら、鮮やかによみがえるシーンは、客が投げたタオルを乾布摩擦よろしく前後2回の股間摩擦、それを客席に投げ返したことです。なんてカッコいい
 タオルも急に宙を舞ったと思ったら、不意打ちのように〈ルー・リードの股間〉の汗と匂いをブリーフ+パンツ越しに一気に吸収、純度を増したエクスタシーに悶絶したのではないでしょうか。想定外の運命に見舞われたタオ

チャイニーズガール、美的トラウマの波紋。

 自然引退したのか? と思われていたデイヴィッド・ボウイの一昨年の不意打ち的なアルバム・リリース(『ザ・ネクスト・デイ』)は嬉しい驚きでしたが、さらにリリース直前、リリース後と矢継ぎ早にネット配信されたPVにも驚かされました。特に「スターズ」における女優、ティルダ・スウィントンのあられもない胸はだけ演技に鬼気迫るものがあり、とんでもないものを見せられたと思わないでもなかったですが、彼女はポン・ジュ

なるか、一念勃起、バンド・デシネ復興。

 バンド・デシネ、このフランスの漫画ジャンルはアートのジャンルでもあって、たとえばバンド・デシネ漫画家、映画監督でもあるエンキ・ビラルはルーブル美術館と組んで、『ルーブルの亡霊』展を美術館内部で展開したりするわけです。
 このところ、わが国ではちょうどバンド・デシネに多くの原作を提供してきたアレハンドロ・ホドロフスキーの来日もあって、また若手の研究家・翻訳家の俊英、原正人氏の尽力もあって、メビウス

ニコラス・ローグの自伝に触発され…。

 前回に映画監督ダニー・ボイルの語り下ろし本を紹介しましたが、この監督がもっとも尊敬する監督がニコラス・ローグです。ローグについてボイルは次のように語っていました。
「ローグの作品はアートであり、ひどく挑発的ななにかである。すべてに理解が及ばずとも、彼の作品には本能的に魅せられてきた」
 ミック・ジャガーを起用しての監督処女作『パフォーマンス』(1970)、ヴェネティアを迷宮として、またゴシックの

ダニー・ボイル演出の秘密がこの一冊に。

 ベネディクト・カンバーバッチなる、中世の高貴な宗教的装飾品を思わせる名前が、デイヴィッド・ベッカム以来のフィーバーを、極東の腐、おっといけない貴女子の間に引きおこしたのは、昨年の来日時ですよね。いうまでもなく、コナン・ドイルが創作した名探偵シャーロック・ホームズを21世紀ロンドンへ移しかえたTV版『シャーロック』に主演したことが、カンバーバッチのスーパー・ブレイクの始まりでした。
 そのフィーバ

この見事な虫の皮骨感、身近な虫で言うと…。

 思わず見惚れ、繊細な手触りに、これはやはり〈紙の本〉じゃないと味わえない恍惚境だなと思わせる書籍が今年に入って刊行されました。フランツ・カフカの代表作『変身』のスーザン・バーノフスキーによる新しい英訳書で、ブック・デザイン担当はKeenanとなっています。
 わが国の出版状況では、コスト面からいって可とならず不可の判断がなされることの多いエンボス(浮き出し)加工が絶妙のバランスで表紙全体に広がっ

ついでにデュシャンの小話ついてでも…。

 コレクター特集のSPと連動して本欄登場はデュシャンです。コメント忘れの書籍がSPに一冊あり、意図的にではなくデュシャン的偶然なのですが、この偶然=チャンスをどこでフォローしようかと考え、あ、本欄があったと気づいた次第。
 忘れていたのは、中央上部に見えている緑色本で、表紙にドットで『THE BRIDE STRIPPED BARE BY HER BACHELORS EVEN』、とタイトルが穿たれた

死んだ少女の残したものは…。

 真偽不明のまま、あえかな都市伝説の〈証拠品〉として、1世紀に渡ってパリで存在し続けてきたデスマスクが《名もなきセーヌの少女》です。ノートルダム寺院の側にあった死体安置所で採られたと言うことなのですが、彼女が誰か? 作者が誰か? が定かでないのです。それ以前に、はたして、本当にデスマスクなのか? 目を閉じ、微笑したライフマスクではないか? といまだに結論は出ていません。ミステリアスな少女。
 この

悪場所で採取してきた、ベルヴィル・ノワール。

 ぎりぎり自炊ですませるという今回の長旅で、拠点としたアパルトマンは、パリのベルヴィルです。前回は新興オシャレ地区のマレで、ピカソ美術館の側、どこへ行くにも便利でしたが、今回はガラッと変わりました。あの名作映画『赤い風船』の舞台となった場所、アニメ『ベルヴィル・ランデブー』の三つ子のオバアサンが生まれ育ったヴィル(街)、あるいは、シャンソンの不世出の名花、エディット・ピアフの生地近く、と説明できま