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小説家

怖さが潜む、ゾッとするフレーズ。

思春期の百閒が動物をいじめる随筆の最後がこれ。死の瞬間に色が変わったというんだけど、ここで物質レベルの話が「死」という状態の話に切り替わっている。直前の鮒や蟹のところでは白やら青やら出てくるのに、この部分だけパートモノクロになって、何色に変わったのかが書かれない。この欠落がたまらなく怖いんだけど、これは文章だからこそできる技で、短いなかに取り返しのつかなさやある種の絶望感さえ漂っています。すごく視

小説家・酉島伝法さんの書斎は、風が吹き抜ける川縁。

川縁で小説を書くようになったのは、『宿借りの星』を書き始めた頃からですね。物語に入り込めず、体調もすぐれず、集中力が続かずにいたときに、青山真治を追った番組で、監督が川縁で脚本を書いていたのをふと思い出して、近くにこんないい環境があるのに利用しない手はないと気づいたんです。さすがに原稿を書くのは難しいだろうなと思いつつ、一応パソコンを持って気分転換のつもりで出てみたら、異様に集中できたんです。以降

名古屋という名の小宇宙。文・吉川トリコ

昔から言われていることだが、名古屋の子どもは名古屋の外に出ない。「名古屋の外に出る」という発想そのものがすこんと抜け落ちている。私の出身高校はそこそこの進学校だったのだが、大半は地元の大学に進学し、中には東京や関西の大学に進学する子もいないでもなかったけれど何年かするとそのほとんどが戻ってきた。就職試験の際、名古屋の企業は地元出身の人間を優遇すると聞いたこともある。
 
まわりを見渡せば、地元で進

COMPASS

大学進学を機に上京し、卒業後はそのままインテリアショップに就職した店主・杉戸伸行さん。震災をきっかけに地元・名古屋へ戻り、2012年にこの店を開いた。「どこの店も売れ筋のものを置くから同じような店ばかりで面白くない」という思いから「常にブレることなく同じ方角を指し示す方位磁石でありたい」という意味合いを店名に込めた。昔からアウトドア・カルチャーに興味があった杉戸さん。そのきっかけは、冒険家であり写

新世代J−POPの感覚的なことば。

「2000年代のJ−POPの歌詞は、等身大や共感に焦点を絞って書かれたものが多かった」そう話すのは、J−POPに精通する音楽ジャーナリストの柴那典さん。一つの要因が、“着うた”だった。「今や着うたは失われた文化ですが、J−POPカルチャーの中では無視できないほどの影響があった。そこから女性シンガーソングライターのカリスマが登場し、その代表が西野カナ。彼女の歌詞の一番の特徴が、同世代の女子のライフス

大前粟生『回転草』の綾小路(回転草)

名前:大前粟生『回転草』の綾小路(回転草)

症状:家から笑い声が聞こえてくる。(中略)家庭の光が漏れてきて、僕に染み込んでくる。これから先、僕がこの光を直に浴びることはない。

備考:『たべるのがおそい』で反響を呼んだ表題作ほか、小説家デビュー作となった「彼女をバスタブに入れて燃やす」など、受賞作を含む全10作。書肆侃侃房/1,500円。

石原裕次郎さんは、僕の生涯の大恩人です。| なかにし礼

 昭和38(1963)年の夏の終わりに、新婚旅行で訪れた伊豆の下田で石原裕次郎さんと出会いました。彼は有名なスター、僕は一介の苦学生。それが向こうから声をかけてきた。指を差されて「君たちは新婚かい? 新婚カップルがたくさんいるから品評会をやってたんだ。君たちが一番かっこいいね」と。ビールをご馳走になって、僕がシャンソンの訳詩をしている苦学生だと知ると、「こりゃ、嫁さんを食わせていけるか心配だな。日

Lucidity & Intuition: Homage to Gertrude Stein(2011)|スーザン・ヒラー

「ガートルード・スタインへのオマージュ」と題されたこの作品。アール・デコ調のライティングデスクには、取り出すのが難しいほどにギュギュッと本が詰まっています。小説家でありアートコレクターでもあったガートルード・スタイン(1874〜1946)の思想や生き方を、この机一つで体現するかのように。スタインは当時、いち早くピカソやマティスらの絵に理解を示し、作品を収集し、アーティストを支援したことでも知られて