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小説家

新世代J−POPの感覚的なことば。

「2000年代のJ−POPの歌詞は、等身大や共感に焦点を絞って書かれたものが多かった」そう話すのは、J−POPに精通する音楽ジャーナリストの柴那典さん。一つの要因が、“着うた”だった。「今や着うたは失われた文化ですが、J−POPカルチャーの中では無視できないほどの影響があった。そこから女性シンガーソングライターのカリスマが登場し、その代表が西野カナ。彼女の歌詞の一番の特徴が、同世代の女子のライフス

大前粟生『回転草』の綾小路(回転草)

名前:大前粟生『回転草』の綾小路(回転草)

症状:家から笑い声が聞こえてくる。(中略)家庭の光が漏れてきて、僕に染み込んでくる。これから先、僕がこの光を直に浴びることはない。

備考:『たべるのがおそい』で反響を呼んだ表題作ほか、小説家デビュー作となった「彼女をバスタブに入れて燃やす」など、受賞作を含む全10作。書肆侃侃房/1,500円。

石原裕次郎さんは、僕の生涯の大恩人です。| なかにし礼

 昭和38(1963)年の夏の終わりに、新婚旅行で訪れた伊豆の下田で石原裕次郎さんと出会いました。彼は有名なスター、僕は一介の苦学生。それが向こうから声をかけてきた。指を差されて「君たちは新婚かい? 新婚カップルがたくさんいるから品評会をやってたんだ。君たちが一番かっこいいね」と。ビールをご馳走になって、僕がシャンソンの訳詩をしている苦学生だと知ると、「こりゃ、嫁さんを食わせていけるか心配だな。日

Lucidity & Intuition: Homage to Gertrude Stein(2011)|スーザン・ヒラー

「ガートルード・スタインへのオマージュ」と題されたこの作品。アール・デコ調のライティングデスクには、取り出すのが難しいほどにギュギュッと本が詰まっています。小説家でありアートコレクターでもあったガートルード・スタイン(1874〜1946)の思想や生き方を、この机一つで体現するかのように。スタインは当時、いち早くピカソやマティスらの絵に理解を示し、作品を収集し、アーティストを支援したことでも知られて

正解がないことが「正解」? ラーメンは多様性の時代へ。

ラーメンの街、札幌。今や味噌ラーメンだけが札幌の「正解」ではありません。近年は全国のトレンドを取り入れながら道産食材を使って表現したり、独自のアレンジを加える店が現れるなど、札幌のラーメンは日々進化。それを引っ張るのが20代〜40代前半の若手店主たちです。

弱冠27歳ながらアンテナ感度の高さで新風を起こす〈まるは〉長谷川凌真さん。“今”に満足せずストイックにブラッシュアップを続ける〈Lab Q〉

世界を読み替える、クトゥルー神話の魅力。

人類が登場するはるか以前、地球を支配していたのは異次元から到来した邪悪なる神々だった。異形の姿を持つ邪神たちは、地底や海底で眠りに就きながら、復活の時を虎視眈々と狙っている。「クトゥルー神話」とは、こうした壮大な世界観のもとに創作された複数の作家たちによるフィクションの総称だ。その起点となったのは、アメリカの怪奇小説家H・P・ラヴクラフトが1920年代から30年代にかけて執筆した作品。彼の死後、多

本を読む人の頭の中まで覗けてしまう面白さ。

「2003年、高校2年で立ち上げたネット古書店が始まりです」と店主の竹田信弥さん。その後は東京・白山に実店舗を構え、15年に赤坂へ。辻原登や岡和田晃といった小説家や評論家をセレクターに選書棚も展開、人文科学の品揃えに力を入れている。

『「百年の孤独」を代わりに読む』は2018年、竹田さんが感銘を受けた同人誌。「一見、南米文学の傑作を解説するようで、なぜかドラマや映画の話題が多く登場します」。例え

幻想小説? いやいや。これはもう 「読むフリークライミング」でしょう。

小説の楽しみにふたつある。「視る」楽しみと「よじ登る」楽しみだ。「視る」楽しみといっても「イメージを喚起する記述のある小説」という意味ではない。小説は筋の構造やできごとの布置、登場人物たちの対立図式を提示したり、発展させたり、ときにはひっくり返してみせたりする。僕たち読者はその模様、パターンの広がりや変化を、小説の頁から距離を取って俯瞰して、わくわくしたり意表を突かれたりする。読んでいるあいだ、つ

「ゴシック」とは生き方の問題。 屈強な美意識で社会の虚構を穿つ。

『歌人紫宮透の短くはるかな生涯』という、すさまじい奇書がある。

これは1980年代を駆け抜けた天才歌人・紫宮透の作品と生涯を、彼自身の歌作や発言に加え、あまたの関係者たちの証言から繙いてみせた伝記  を、あくまで読者に紹介するという体裁の小説。要するに、紫宮透は実在しない。彼の歌作も、それを評する夥しい声も、それらを書き綴った伝記本も、すべては作者・高原英理ひとりの想像力が編み上げたもの。ところ