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とんかつ

アスリートの勝負メシ。

 1980年代のこと、早稲田大学ラグビー部の面々は、試合前日には、とんかつを食べる  と当時の雑誌で読んだ記憶がある。敵に「カツ」ってことですよ。いいね、このシンプルな発想! 単純な中学生はそれを真似て、試合やテストの前の日にとんかつを食べたなんてこともあったな。
 とんかつは、昭和を代表するいわゆる「勝負メシ」であったわけですが、いまはスポーツ栄養学が発達して、いろいろなものが勝負メシになってお

風流とんかつ 奥三河の味噌カツ定食

 もう随分前のことになるが、舞台の公演が近づくと毎日のように渋谷にあった〈花〉という喫茶店で台本を書いていた。僕は歩きながら考える癖があり、雨の降ってない日は家から渋谷まで片道1時間くらいかけて往復していたのだが、その頃から気になっていた店がある。
 つまり二十年近く気になっていた。それだけ気になるなら入れば良いのにと思われるだろうが、タイミングというのは中々合わないもので、もしかすると、お互い好

とんかつ檍のカタロースかつ定食

 週に一度はとんかつを食べる自分にとって、〈檍〉のカタロースかつとの邂逅は衝撃だった。革命には、多くの批判をはね返すビジョンや気概が不可欠というが、このとんかつにはそれを体現するのに充分なインパクトと論理性が備わっている。しっかりとした揚げ色の衣を纏った4㎝はあろう厚切り肉は、通常よりも幾分か薄くカットされ、箸で持つ度にぷるんっと震えるSPF豚ならではのピンク色の肉層には、溢れ出そうな肉汁が解き放

とんかつ山和の特ロースかつ定食

 全日本とんかつ連盟に加入し、食材にこだわりのある昔ながらの店。混むランチを避け、落ち着いた夜に行っています。箱根路(何故?)が描かれた暖簾の奥から、お肉を丁寧に調理する音がドスドス、揚げる音がカラカラと心地よく聞こえてきます。お皿を運ぶ時に触れないよう配慮されているのか、暖簾の片側だけ短くカットされているところに、几帳面さがうかがえます。ご夫婦で切り盛りされているのですが、名店にありがちな偉そう

平田牧場の金華豚ヒレかつ膳

 マガジンハウスの『ポパイ』web版でシティボーイに選んでもらっている私ですが、実は、一九七四年に山形県に生まれました。数年前、地元から母が上京したとき、一緒に食事に行ったのがコレド日本橋の〈平田牧場〉。〈平田牧場〉は山形県の会社なのですが、二人とも食べたことがありませんでした。めったにない母との食事なので、高級な「金華豚ヒレかつ膳」を注文。すると運ばれて来たのは、サクサクしたパン粉に、一口でかみ

とんかつ椿のあけび

 昨年は私にとってとんかつ元年とも呼べる年だった。
 白いご飯と揚げたてのかつを頬張るとお腹の底でエネルギーが渦巻く感覚がずっと続き、家事や仕事がやけにはかどることに、仕事の打ち合わせでとんかつ専門店に行った夜に気付いた。一人でさっと食べに行けるところもいいし、ケーキよりも即効性があって、焼肉よりも気負わなくて済む。暇を見つけてはガイドブックに載っている店をせっせと巡っていた私に「実家の近所に、そ

すずやのとんかつ茶づけ

 高校2年生の夏、私は美術部の先輩が友人のNちゃんと会う時の「緩衝材」として〈すずや〉にいた。自分に期待されている役割に気付かず、ただとんかつとキャベツとごはんの割合をうまく保って食べるのに注力し、元来マイペースなNちゃんが食べ放題のごはんを一度おかわりしたので心中で尊敬した。ちょっと変わった食べ方のとんかつは先輩にとって自慢のごちそうだったのだと思う。私はただ目の前のちょうど良く残したとんかつに

ふじもとのロースカツ定食

 突然だがとんかつソース問題をご存じだろうか。運ばれてきた熱々のカツにソースを一気に回し掛けると衣がべちゃべちゃになる上に早く冷めてしまう。だからやっぱり一切れ食べるごとにソースを掛けたい。檸檬だって一切れずつ搾りたい。すると衣はサクサクのまま、何口食べても最初の一口のような感動が味わえる。しかし実際これがいちいち面倒くさい上に行為としてどうもぱっとしない。とんかつの無骨な印象と、衣ごときを気にす

とんかつ武信のヒレかつ膳

「おなかが空いてる時に真っ先に食べたいと思うのはカツサンドでおなかがいっぱいでも食べ続けられるのは水餃子」、というのはこの10年くらい変わっていない。今回はカツサンド、ではなくとんかつ。さらに空腹という感じだ。代々木上原に住んで7年、私のとんかつパーセンテージは8割がた代々木上原駅前商店街の〈武信〉のヒレかつ膳。とにかく軽くそして柔らかい。豚好きの人にはもう少し臭くても、と余計な心配するくらい臭み

福家のヒレカツ丼定食

お気に入りのとんかつ屋さんを教えてくれと問われ、非常に困った。お気に入りのとんかつ屋が特にないからだ。
 
そう書くと、とんかつに思い入れが薄いと思われるだろうが、逆。
 
お気に入りでないとんかつ屋が一軒もないのだ。(自分にとって)美味しくないとんかつがない、と同義でもある。
 
あそこのは特に美味しかったとか、あそこのはイマイチというのが、本当にない。人生で出会ってきた全とんかつが等しく嬉しい