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精神科医

大前粟生『回転草』の綾小路(回転草)

名前:大前粟生『回転草』の綾小路(回転草)

症状:家から笑い声が聞こえてくる。(中略)家庭の光が漏れてきて、僕に染み込んでくる。これから先、僕がこの光を直に浴びることはない。

備考:『たべるのがおそい』で反響を呼んだ表題作ほか、小説家デビュー作となった「彼女をバスタブに入れて燃やす」など、受賞作を含む全10作。書肆侃侃房/1,500円。

大前粟生『私と鰐と妹の部屋』の私

名前:大前粟生『私と鰐と妹の部屋』の私

症状:名前って自分でつけたいよね。私も私の名前は私が決めたかった。そしたらさあ、アクマとかにする。ふふ。私の名前はアクマ。試験管から生まれたアクマです。

備考:右目からビームが出て止まらない妹、こっくりさんと暮らす、忍者の私などを描いた表題作含む不思議な手触りのショートショートが全53編。書肆侃侃房/1,300円。

町屋良平『ぼくはきっとやさしい』の岳文

名前:町屋良平『ぼくはきっとやさしい』の岳文

症状:ぼくは黙った。こんなに物事に相対する感覚、感想がおなじなのだから、つたわっているとおもっていた。口にださずとも。

備考:学生時代、全力で相対したピュアな恋と友情。無気力系男子が親や兄弟をも巻き込んで成長していく姿を描くキラキラとした青春恋愛小説。河出書房新社/1,400円。

今村夏子『父と私の桜尾通り商店街』の私

名前:今村夏子『父と私の桜尾通り商店街』の私

症状:ありがとうございました。おいしくいただきました。
長年ここでレジの番をしているけれど、どちらも初めて耳にした言葉だった。

備考:平凡な日常、見慣れた風景が、小さなきっかけで転換し、変容し、運ばれていく。不器用な「私たち」の物語。書き下ろし含む全6編を収録。角川書店/1,400円。

町屋良平『1R1分34秒』のぼく

名前:町屋良平『1R1分34秒』のぼく

症状:なにがわかる。おまえになにが?(中略)ワンツーを打てないボクサーのなにが? いつまでも右ストレートに脅威のないボクサーでいるぐらいなら、死んだほうがいい。

備考:自分の弱さ、その人生に厭きていたプロボクサーの主人公。駆け出しのトレーナーとの日々が心身を、世界を変えていく。2019年、芥川賞受賞作。新潮社/1,200円。

古市憲寿『平成くん、さようなら』の平成くん

名前:古市憲寿『平成くん、さようなら』の平成くん

症状:平成が終わった瞬間から、僕は間違いなく古い人間になってしまう。(中略)時代を背負った人間は、必ず古くなっちゃうんだよ。

備考:平成の終わりとともに安楽死を望む主人公と、それを受け入れられない恋人。2人の関係を通して、生きること、死ぬことの意味を問う。文藝春秋/1,400円。

小川洋子『薬指の標本』のわたし

名前:小川洋子『薬指の標本』のわたし

症状:彼のまわりにも、まだたくさん活字が残っていた。彼の足元でわたしは、無防備な小動物になってしまったような気分だった。

備考:飼っていた文鳥の骨、楽譜に書かれた音、やけどの跡など、思い出の品々が持ち込まれる標本室。その主とわたしの静かで奇妙な愛の情景を描く。新潮文庫/430円。

小川洋子『ひよこホテル』の男

名前:小川洋子『ひよこホテル』の男

症状:「しかし男はこうした思いのあれこれを、少女に向かって言葉にはしなかった。返事がもらえないからではなく、お互い喋らないでいる方が平等だ、という気がしたからだ。

備考:表題の『海』や『ひよこホテル』など、少し歪だが静謐で温かな物語たち7編をまとめた短編集。収録作品に関する著者インタビューも収録。新潮文庫/430円。