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精神科医

古市憲寿『百の夜は跳ねて』の翔太

名前:古市憲寿『百の夜は跳ねて』の翔太
症状:「頭の中で、死んだはずの人の声が聞こえることってありますか」(中略)「あるに決まってるじゃない」何がそんなにおかしいのだろうというくらい、彼女は楽しそうに教えてくれる。
備考:無気力に仕事を続けるガラス清掃員の主人公は、ある日見知らぬ老婆に出会い、とある依頼を受ける。その奇妙な交流が2人にもたらす変化とは。新潮社/1,400円。

怖さが潜む、ゾッとするフレーズ。

思春期の百閒が動物をいじめる随筆の最後がこれ。死の瞬間に色が変わったというんだけど、ここで物質レベルの話が「死」という状態の話に切り替わっている。直前の鮒や蟹のところでは白やら青やら出てくるのに、この部分だけパートモノクロになって、何色に変わったのかが書かれない。この欠落がたまらなく怖いんだけど、これは文章だからこそできる技で、短いなかに取り返しのつかなさやある種の絶望感さえ漂っています。すごく視

山田詠美『つみびと』の笹谷蓮音

名前:山田詠美『つみびと』の笹谷蓮音
症状:蓮音には、(中略)幼な子たちの悲劇と、自身を結び付けることが、いまだに出来ない。本当に、私は、あんな残虐なことをしでかしてしまったのか。
備考:なぜ母親は、灼熱の夏に幼い子供を置き去りにしたのか。虐待やネグレクト、複雑な家庭環境が生んだ悲劇の背景に迫る長編フィクション。中央公論新社/1,600円。

高橋弘希『日曜日の人々』の航

名前:高橋弘希『日曜日の人々』の航
症状:僕にはここが、人々の最後の受け皿にも思えます。理由は聞きません。それが吉村さんの選択であるならば、僕はお手伝いします。
備考:亡くなった従姉の日記を機に自助グループに関わるようになる主人公。そこには拒食症や性的虐待などの背景を持ち、死に魅せられた人々がいた。講談社/1,400円。

木皿泉『カゲロボ』のカゲロボ

名前:木皿泉『カゲロボ』のカゲロボ

症状:友人たちは「謎だよねぇ」と互いに繰り返すばかりだった。
「やっぱり、カゲロボなんだよ」
誰かが、ぼそっと言った。

備考:知らぬ間に人間にまぎれているとされるロボットのような存在、カゲロボ。それは日常に潜む危うい謎を露わにし心の闇や傷の傍らにいるようだ。新潮社/1,400円。

浅生鴨『伴走者』の淡島

名前:浅生鴨『伴走者』の淡島

症状:「お前が不安ってことは、俺も不安ってことだ」
そうなんだ。淡島は顔を上げた。俺は伴走者だ。内田が恐怖を感じずに走れるようにするのが俺の役目じゃないか。

備考:視覚障害者ランナーの伴走者となった主人公の、伴走を通した心の変化をありありと描いた「夏・マラソン編」と、「冬・スキー編」の2編。講談社/1,400円。

ケン・リュウ『紙の動物園』のぼくと母

名前:ケン・リュウ『紙の動物園』のぼくと母

症状:母さんが中国語で話しかけようものなら、ぼくは返事をしなかった。(中略)やがて、母さんはぼくがそばにいるときには、まったく話さなくなった。

備考:中国生まれ米国育ちの著者によるSFファンタジー。中国移民の母子の心の断絶を描いた表題作は2011年史上初の3大SF文学賞を制す。全7編。早川書房/680円。

大前粟生『回転草』の綾小路(回転草)

名前:大前粟生『回転草』の綾小路(回転草)

症状:家から笑い声が聞こえてくる。(中略)家庭の光が漏れてきて、僕に染み込んでくる。これから先、僕がこの光を直に浴びることはない。

備考:『たべるのがおそい』で反響を呼んだ表題作ほか、小説家デビュー作となった「彼女をバスタブに入れて燃やす」など、受賞作を含む全10作。書肆侃侃房/1,500円。

大前粟生『私と鰐と妹の部屋』の私

名前:大前粟生『私と鰐と妹の部屋』の私

症状:名前って自分でつけたいよね。私も私の名前は私が決めたかった。そしたらさあ、アクマとかにする。ふふ。私の名前はアクマ。試験管から生まれたアクマです。

備考:右目からビームが出て止まらない妹、こっくりさんと暮らす、忍者の私などを描いた表題作含む不思議な手触りのショートショートが全53編。書肆侃侃房/1,300円。

町屋良平『ぼくはきっとやさしい』の岳文

名前:町屋良平『ぼくはきっとやさしい』の岳文

症状:ぼくは黙った。こんなに物事に相対する感覚、感想がおなじなのだから、つたわっているとおもっていた。口にださずとも。

備考:学生時代、全力で相対したピュアな恋と友情。無気力系男子が親や兄弟をも巻き込んで成長していく姿を描くキラキラとした青春恋愛小説。河出書房新社/1,400円。