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日常的ドイツの冒険 by村上春樹 Vol.6「どれをとっても甲乙つけがたいドイツ動物園事情」

村上さんがドイツのいくつかの街を巡った1ヵ月間を記録。1984年のBRUTUSドイツ特集でのレアなエッセイ集を復刻掲載。

Text: Haruki Murakami

どれをとっても甲乙つけがたいドイツ動物園事情

動物園のレストランの話をつづける。

ハンプルク郊外のハーゲンベック動物園の中にもわりにきちんとしたレストランがある。もっともここはウェイトレスのかんじもいまひとつだし味の方もいまひとつである。

僕の食べたのはレバーケーゼとソーセージと黒パンとポテト・サラダのセットにビール、これで千二百円くらいだから、値段は高くないのだけれど、ぜんたいの雰囲気にいまひとつ動物園的な親しみが持てないのである。だからもっと安くあげたいという人はレストランに行かずに、おもちゃの電車の前にあるスタントで生ビールとバンつきソーセージとポテト・フライ(ポム・フリット)を頼めば五百円くらいであがります。

ハーゲンベック動物園はミシュランでは二ツ星だけど、実感としてはフランクフルトよりとくに格下というほどのこともなく、広さと緑のからいくとこちらの方がのびのびとしておちつけるくらいだ。広い園内をマーラという種類の南米産の野ウサギがいっぱいとびまわって、見物客に餌をねだっている。しかしなにしろ広くて、ひととおりコースを巡るとグッタリ疲れてしまう。

ベルリン動物園には残念ながらレストランはなく、カフェテリアで食事をとるしかないが、値段は安く、味もまずまずである。ビールも各種揃っていて、例のストローで飲むベルリナー・ヴァイスもある。それからここでコーヒーを飲むと、動物の絵の入った袋入り角砂糖がもらえて、これはおすすめです。

ベルリン動物園は機能的にうまく作られた動物園で、僕なんか三日かよったけど(暇だね)ぜんぜん飽きなかった。とくに気に入ったのはパンダの檻で、どういうわけかベルリン動物園のパンダの檻の前には見物客なんていつ行ってもほとんどいないのである。たまにいたとしても、みんなすごくつまらなそうに眺めている。だからパンダの方もわりに気を抜いてゴロゴロしていたりして、これもおかしい。こういうところだときっとパンダも長生きするんだろうね。

では、ベルリン動物園で何がいちばん人気のある動物かというと、これが実にニシキヘビなのである。水族館のニシキヘビのガラス檻の前はいつも興奮した子供たちでいっぱいであった。国情の違いというかなんというか、おかしい。