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音楽ライター・まつもとたくおが語る、K-POPイズムを感じる密着映像『BLACKPINK』『EYES ON ME : THE MOVIE』

ここ数年の間で、世界的に注目を集めるジャンルになったK-POP。なかでも最近はガールズグループの活躍が目覚ましい。ピックアップした2作は、韓国発のアイドルが国境を超える人気を手に入れるために欠かせなかったものを、映像を通して浮き彫りにする。

Text: Takuo Matsumoto

K-POPが世界に拡散した理由と美意識を
映像で理解する

K-POP界では昨年、2本の映像作品が大きな話題を呼んだ。一つは『BLACKPINK ~ライトアップ・ザ・スカイ~』。BTSに次いでワールドワイドな存在になった女性4人組の素顔に迫ったもので、各メンバーの幼少期のエピソードに始まり、練習生の時期を経て念願のデビュー、そして瞬く間にスターダムにのし上がるまでを手際よく紹介していく。

ドキュメンタリー『BLACKPINK ~ライトアップ・ザ・スカイ~』
BTSと並ぶ人気を得たBLACKPINK。

もう一つは『EYES ON ME:THE MOVIE』。オーディション番組で選抜された女性12人からなる日韓混成グループ・IZONE(2021年4月に活動を終了した)の、初となるアジアツアーに密着した作品だが、本番に向けて一生懸命練習に励むメンバーたちの様子を丁寧に拾っており、ライブ以外のシーンも十分に楽しめる内容に仕上がっている。

ガールクラッシュ(女性が憧れる女性)の代表格・BLACKPINKは、自身のクールなイメージに合わせたのか、派手な演出を好まず、自然体の彼女たちを淡々と見せているのが印象的だ。一方のIZONEはアイドルならではの華やかさを大切にした、きめ細かな構成でファンの期待を裏切らない。

2作はテイストが異なるものの、共通点も見出せる。それはプロ意識の高さを特に強調していることだ。どちらのグループもステージを降りた後は素の自分をさらけ出し、その時々の率直な気持ちを語っている。

しかし、応援してくれる人たちを失望させるような発言は一切しない。「いつでもどこでも完璧なものを提供する」という考え方がK-POPの勢力拡大の原動力だと私は考えているが、彼女たちもその例外ではなかった。

時代のニーズに対応しつつ
最善を尽くそうとする姿勢

とはいえ、見せ方には違いがあるのが興味深い。BLACKPINKは世界へ出るためには国や性別、人種を超えた魅力が不可欠だと早い時期から自覚していたのだろう、グループおよび個々の活動を通じてすべての人たちへ向けて「常に自分らしくあれ」とメッセージを送る。

作中でメンバーのジェニーが「ただのK-POPじゃないことを受け止めてもらえた」と語る通り、既存の枠に収まらないエンターテインメントを作ろうとする態度が成功に結びついたのだ。

IZ*ONEの場合、レベルの高いパフォーマンスを心がけつつ日本のアイドルにも通じるキュートさをアピールする姿勢が感じられる。メインターゲットである日韓の若者を意識した結果と推測するが、本人たちも周囲から何を求められているかを十分に理解しているらしく、発言や表情に迷いがない。

IZ*ONEのメンバー
日韓で大ブレイクを果たしたIZ*ONE。

両グループを通して言えるのは、時代のニーズに対応できる柔軟性と、ベストなものを確実に届けたいという意思を兼ね備えている点だろう。実はこれは韓国の多くの歌手に当てはまることで、BTSが代表的な例として挙げられる。彼らはコロナ禍を受け、それまで貫いていた韓国語詞・クール路線を外れ、世界で通じる英語詞で明るいメロディの「Dynamite」をリリースし、大成功を収めた。

アイドルのドキュメンタリーは、主役の魅力を伝えることが前提。しかし、今回取り上げた2作はそれだけにとどまらず、K-POPならではの美意識を伝えている。

©CJ 4DPLEX&STONE MUSIC ENTERTAINMENT