関西クラフトビール界を牽引し続けてきたキーパーソンの一人が、〈クラフトビアベース〉谷和さん。2012年独立、大阪市内にショップとパブ4店舗を展開。流通から販売、提供までを一貫して手がけ、3年前からは自社醸造も行う。
日本地ビール協会認定のビアジャッジ資格を持つ谷さんには「造り手が目指したビールの味を、正しく世に伝えたい」という強い信念がある。きっかけは、梅田の老舗ベルギービール専門店での修業時代に、ベルギーのデュベル・モルガット社を訪れたときのこと。「研修でビアサービングに挑みましたが、満足のいかない出来で。その一杯を飲んだオーナーから“僕らの努力が、これでダメになるんだ!”とめっちゃ叱られて……。開業以来貫くテーマがクオリティ・コントロール(品質管理)だ。

本店に常時ストックされる300種のうち海外ものは7.5割。ベルギーやドイツの伝統的な造りがなされたものから、北米のマイクロブルワリーの一本まで、世界の最先端をキャッチできる品揃え。それらはセラーと冷蔵庫で緻密な管理がなされているが、谷さんは入荷の前段階から心血を注ぐ。
「一度でも常温に置いてしまえば鮮度はガタ落ち」と、流通状況を常に把握。到着後の試飲チェックは欠かさず「ビアスタイルにあってはならない香りを感じたら、品質向上のためにもインポーターや醸造家に即、伝えます」。さらに、醸造日や輸入日など日を遡ったうえで、質をジャッジ。プロがきっちり管理するからこそ、ビール本来のポテンシャルが味わえるのだ。
醸造を始めたことで、「造り手という責任感が加わりましたね」と谷さん。カモミールの花で香りづけしたペールエール主体の「FURISODE」ほか、毎週新作をリリースするが、同じレシピのものを出さない。「毎回違う視点でビールと向き合うと、味作りにおいて新たな気づきも。毎日がチャレンジです」
2021年9月には、新たな挑戦が形となる。本店と醸造所、姉妹店1店舗を統合させた施設が、大淀に誕生する。80坪の店内には醸造所とビアカフェ、ショップを設け、2階にはセミナースペースも。谷さんを筆頭に、醸造家たちとの交流や発信にも期待は高まるばかり。「クラフトビールは元来、地域色が強い飲み物。だから地元の人たちとともに育ち、地域が活性化するような場になれば」
海外の最新を伝えながら、地域のクラフトビール文化を掘り下げて。「ビールで鳥肌が立つ経験を、一人でも多くのお客様に感じていただきたい」と熱く語る、谷さんの発信から、目が離せない。