韓国を誇るトップスター俳優のハ・ジョンウ。パク・チャヌク監督の映画『お嬢さん』(2016)での怪しい詐欺師・藤原伯爵役、ネットフリックスの麻薬クライムサスペンス『ナルコの神』(2022)で麻薬捜査に巻き込まれる民間人カン・イング役。
近年では、真摯なマラソンコーチ役の『ボストン1947』(2023)や、ハイジャックされる飛行機の副機長テインを好演した『ハイジャック』(2024)等で見せる、危機的な状況の中で苦難の表情に満ちた表情を思い浮かべる人も少なくないだろう。
そんなハ・ジョンウが最新作で挑むのは、なんと人生初の接待ゴルフに全身全霊で挑む、テック会社の社長だ。

2月27日より全国公開する映画『ロビー!4000億円を懸けた仁義なき18ホール』で、ハ・ジョンウは監督と脚本を自ら手がけ、主役の若社長チャンウクを演じている。
本作は、技術力は優れているが不器用で借金まみれのテック会社の社長チャンウクが、4000億円(4兆ウォン)級の国策事業に食い込むために、人生初のロビー活動である接待ゴルフに挑むという人生エンターテインメント作品である。
接待ゴルフという独特な世界を舞台にしたのは、コロナ禍に自らがゴルフを始めたことがきっかけになったそうだ。
「ゴルフというのはスポーツの一種だとは思いますが、いろいろな面でちょっと風変わりだと感じました。もちろん間違いなく、体力や技術を必要とするスポーツではあるんですが、ゴルフ場ではカートに乗って移動しますし、他のスポーツと比べると運動量はそこまで多くはない。汗を流して対戦するというよりは、ゆったりしたテンポで優雅に時間が流れる印象がありました。また、ゴルフ場というのはとても広い場所ではありますが、とても閉鎖的な空間であり、その中で1〜2時間というわけではなく、朝からほぼ1日という長い時間をキャディーを含めて5人程度の少ない人数が共に過ごす。そうしたゴルフの特性にとても興味が湧いたんです」

ゴルフ場には様々な欲望が渦巻いている。チャンウクのように利権を得るべく接待に挑む人もいれば、入札実務責任者チェ室長(キム・ウィソン)は、女性プロゴルファーのジン・セビン(カン・へリム)にただならぬ熱情を抱いており、彼女がゴルフに来ることを理由に接待を受けることになる。さらに、同じゴルフ場では、別のゴルフ接待が行われていた。
それは、チャンウクの最大のライバルであるやり手のソン社長(パク・ビョンウン)による、事業の実権を握るチョ・ヒャンスク長官(カン・マルグム)への接待だった。
そこにはチョ長官が推す俳優のマ・テス(チェ・シウォン)が参加しているが、キャディーとして参加したゴルフ場経営者の妻ダミ(チャ・ジュヨン)と昔恋仲だったことが判明。長官への接待よりも二人の愛に火が点いてしまう。そこに、怒り狂ったゴルフ場経営者(パク・ヘス)が現れ、欲にまみれたゴルフ場は大混乱となる。
あちこちで欲望を露にしたトラブルが起きるゴルフ場での、ベテラン俳優陣たちによる丁々発止のアンサンブルも見どころのひとつである。
プロゴルファーへの下心が見え見えのチェ室長を演じるのは、『新感染 ファイナル・エクスプレス』、『ソウルの春』などで国民的ヴィランのキャラクターを演じてきたキム・ウィソン。
少しだらしない汚職長官を演じたカン・マルグムは『チャンシルさんには福が多いね』(2020)で賞を総なめにした。その他SUPER JUNIORのチェ・シウォンや、パク・ヘス(『イカゲーム』(2016)『刑務所のルールブック』(2023)等)、『恋のスケッチ~応答せよ1988~』(2015)でお馴染のイ・ドンフィ等、強力な布陣が固める。
監督であるハ・ジョンウは、撮影現場では演技に集中するため、「通常の10倍以上も時間をかけた」徹底したリハーサルを行ったという。
「そうですね。現場では俳優として演技に集中せざるを得ません。なので、他の俳優さんたちと十分に話す時間はあまりとれませんでした。その代わり準備にとても多くの時間を費やしました。撮影に入る前に俳優さんたちとたくさん話をしました。そして本読みのリーディングの時間にとても多くの時間を費やしました。そこで、俳優さんたちの言葉遣いや、言葉のリズム、感情表現をどうするかを把握した上でキャラクターに溶け込ませていったのです」

ゴルフ場という舞台装置を用いて、人間のどうしようもない欲望をあらわにし、そのどうしようもなさを「笑い」として観客に提示する。脚本や演出の細部に、俳優ハ・ジョンウが長年の活動で培った人間観察力が光る。最後の質問として、監督としてこだわる「コメディ」について尋ねた。
「人間は誰しも両義性を持っています。映画に登場する室長を例にしますと、権力を持っていて国の仕事もしている、一見落ち着いたように見える人物ですが、ゴルフ場では下心が明るみに出てきます。その裏の部分が人間らしい一面でもあり、おかしみを生み出す部分でもある。私自身、子供の頃から人間の裏側というものにすごく興味がありました。俳優の仕事でも、映画監督の仕事でも、常に人物を一つの側面からだけではなく、立体的に描きたいと考えながら取り組んでいます。さらに、そうした人間の裏側が暴かれたときにおかしみを感じる。コメディ作品に取り組むのは、そうした理由があるからだと思います。でも、映画を観る人たちには、とにかく楽しんでほしい。映画には様々な台詞やシーンが登場しますが、自由に受け止めて、楽しんで見ていただけたらと思います。そして、見終わったときに感じたことをみんなで話し合えるような作品になったらうれしいです」
2月27日(金)シネマート新宿ほか全国順次公開。