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シネマコンシェルジュの映画監督論:真魚八重子「お気に入りは、ホラーやオカルトを美しく撮る監督。」

巨匠から新鋭まで、素晴らしい監督たちが次々と登場する今、観るべき監督を知るには、やっぱり信頼できる映画通の後ろ盾が欲しいもの。独自の審美眼で映画シーンを追いかけ続ける30人に頼ることに。

Illustration: Thimoko Horiguchi / Text: Yoko Hasada, Aiko Iijima, Saki Miyahara, Konomi Sasaki / Edit&Text: Emi Fukushima

映画好き真魚八重子へ7つの質問

Q1

あの監督の虜になった名シーンは?

真魚八重子

アリ・アスター監督の『ヘレディタリー/継承』の主人公が事故を起こした後、とりあえず家に帰って横になり、現実から逃げてしまうシーン。あの心理はわかりすぎるほど伝わってきます。

Q2

好きな監督のベスト作品は?

真魚八重子

キャスリン・ビグロー監督の『デトロイト』。ブラック・ライヴズ・マターの動きとともに、近年の黒人差別を描いた厭な映画として再度評価したいです。

Q3

好きな監督のイマイチだった作品は?

真魚八重子

ルカ・グァダニーノ監督『サスペリア』。オリジナルの『サスペリア』も、グァダニーノの『君の名前で僕を呼んで』も大好きだったのに、なぜこんなことに……。

Q4

最近になって魅力的に感じるようになった監督は?

真魚八重子

あつかましい作風で苦手だったギャスパー・ノエ監督。しかし『LOVE【3D】』では恋愛の取り返しのつかない過ちを切なく描いていて、一気に許容できるように。

Q5

あの監督に撮ってほしい、意外なテーマは?

真魚八重子

アリ・アスター監督にサイコスリラーを撮ってほしい。怖さが幽霊でなく人間の心理だったら、より一層怖い気がします。

Q6

個人的に今気になっている監督は?

真魚八重子

アリーチェ・ロルヴァケル監督。彼女の作品、『幸福なラザロ』は格調高く、でも痛烈さや通俗性もあって飽きません。寓話的な飛躍も素晴らしく、次の作品も観たいと思わせる監督です。

Q7

将来が楽しみな次世代の監督は?

真魚八重子

ジョシュア&ベニー・サフディ兄弟は自主製作からNetflix映画に昇格したところ。いずれ世界的評価が上がって偉大な監督になっていくのではないかと思います。

2010年以降の「この監督のこの一本」。
ナ・ホンジンの『哭声/コクソン』

アジアオカルトの最高峰を生んだ、若き巨匠。

デビュー3作目にして、すでに韓国を代表する監督の風格を持つナ・ホンジン。本作は田舎の村で起こる不可思議な連続殺人を描いたオカルトホラーだ。

平和な村で謎の病や家族による惨殺事件が立て続けに起こる。村民たちはどうやらその奇妙な現象に、ある日村に住みついた日本人の男(國村隼)が関わっているのではないかと疑う。村の警官ジョングは現場検証をしている際、野次馬に紛れ、例の日本人がフィルム式のカメラで遺体や犯人を撮影していることに気づく。

本作は堂々たるオカルトホラーである。連続殺人という血なまぐさい物語の中から、人間にはどうしようもない霊的な力が立ち上ってくる。國村隼の山小屋にある、死者や殺人者たちの写真を飾った祭壇が、強烈な禍々しさを感じさせる。

胡乱な祈祷師を演じるファン・ジョンミンが素晴らしい。祈祷中にトランス状態で舞う動きと、悪霊を払う浄化の言葉の気合。そして祈祷師像を裏切る普段の姿の落差がとても魅力的だ。韓国の土着的な祈祷やリアリティのある恐ろしさがせめぎ合う、アジアオカルト映画の最高峰の一つである。