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綿矢りさ、川田裕美、unpis、長田篤、鳥羽和久が選ぶ、自分史上最高あんこ vol.2

初めて口にした瞬間から今に至るまで、誰しもに「最高」なあんことの出会いがあり、そのエピソードに為人が表れます。深い味わいが"ボディブローのように効く"汁粉や、思わず背筋が伸びるほど美しい上生菓子など。あんこ好きな15人に、マイベストを聞きました。

Photo: Megumi Seki, Kazuharu Igarashi, Jun Nakagawa, Shimpei Suzuki, Wataru Kitao, Shinichi Suzuki / Text: Yoko Fujimori, Ryota Mukai,Emi Fukushima, Neo Iida, Nozomi Hasegawa / Styling: Keisuke Matsuoka / Hair&make: Takahiro Hashimoto

綿矢りさ(小説家)

ぷりぷりした粒の食感を楽しむ、金沢銘菓。

数あるお菓子の中でも一番好きなのがあんこのお菓子。小さい頃はパック売りの水羊羹をゼリーのように食べていました。
それに京都にある実家の近くには、長年続く小さな和菓子屋さんがいくつもあって、ラインナップが季節や月ごとに替わるんです。

例えば、6月なら白いういろうの上に甘く煮た小豆がのった「水無月」。お母さんが買ってくれてよく家族で食べました。今でも自宅でさっとぜんざいを作ることも。昔から和菓子は身近な存在だったけれど、きんつばにはあまり馴染みがなくて。

石川〈中田屋〉きんつば
〈中田屋〉のきんつば。大粒な北海道産の大納言小豆を使用。取り寄せもできる。1個¥195。

「ほとんどあんこだけ」のような和菓子は京都に少ない印象があります。実際、〈中田屋〉さんのこの味を知ったのは3年ほど前のこと。選考委員として携わっている文学賞、泉鏡花賞の授賞式のために金沢へ伺った時におみやげでいただきました。

なによりびっくりしたのは、小豆一粒一粒のぷりぷりした食感がしっかり楽しめること。つぶあん派の私にとってこれ以上ないあんこのお菓子です。
外側の薄くて軟らかい白皮の淡泊さと、内側のあんこの程よい甘さのバランスも好みで、生っぽいしっとりした口当たりもいい。晩秋の季節、現地で食べるのを楽しみの一つにして授賞式へ向かっています。

小説家・綿矢りさ

川田裕美(フリーアナウンサー)

栗きんとんと蒸し羊羹の幸福な出会い。

あんこを食べ続けている人生なんです。物心ついた時から祖母の手作り白玉団子にあんこを添えて食べていましたし、回転焼きもあんまんも大好物。晩ご飯前にイチゴ大福を食べすぎて、禁止令が出たことも。

あんこ缶を常備するような家庭だったので缶のまま食べるのも普通でした。今も気になるあんこ菓子は即チェック。
岐阜生まれの「くり壱」は、元バドミントン選手の小椋久美子ちゃんに教えてもらって、こんな組み合わせがあったんだ!と衝撃を受けた一品。

栗きんとんを包み込んだ蒸し羊羹は食感がふわっ。一体感がすごいんです。甘さは控えめで、朴葉の香りも漂う上品さ。あんこ好きにも栗好きにもおすすめの羊羹です。

東京〈恵那川上屋〉くり壱
〈恵那川上屋〉のくり壱。甘さ控えめの蒸し羊羹で滑らかな栗きんとんを包み、朴の葉を巻いて蒸し上げ。里山の風情も。¥1,080(小)。

unpis(イラストレーター)

途中下車してでも食べたい、まるでプロダクトな銘菓。

大学時代、祖父母の家で「何これ?」と手に取ったのが大みか饅頭でした。白くてつるんとした見た目で、譬えるならAirP●dsのケースかな(笑)。洗練された美しさを目の当たりにして、思わずじーっと眺めてしまいました。

米粉とヤマトイモで作られた真っ白な生地のもちっとした食感の先にある、甘さ控えめのあんこ。これが丁寧に濾してあってとても上品で。最初の一口で「うわっ、おいしい!」と思ってから買い続けてますね。

福島県に実家があるので、帰省の際は水戸駅で途中下車して、駅のおみやげ店で実家用と道中で食べる用を買うのが定番。特急「ひたち」の車内で大みか饅頭を食べる時間がひそかな楽しみなんです。

茨城〈運平堂本店〉大みか饅頭
〈運平堂本店〉の大みか饅頭。あんこには北海道十勝産の小豆を使用。保存料を一切使わずに蒸し上げている。公式HPでも購入可能。1個¥110。

長田篤(インテリアデザイナー)

あんこ愛に目覚めた、2口サイズの名作最中。

小ざさ〉は僕が以前、吉祥寺に住んでいた頃の思い出の店。ここの羊羹は早朝から行列して引換券を入手しないと買えないことで有名ですが、大の和菓子好きの母が遊びに来るたびに並んで買ってきてくれたんです(笑)。
この羊羹の、風味豊かでいてすっきりとした後味に感動して、あんこ好きになりました。

普段よく食べたのは気軽に買える最中の方。最中の餡も程よい粘りがありつつ喉越しが軽やかで、お茶なしでもいけるほど。
皮も香ばしくて、小ぶりなサイズ感もいい。小豆派でしたが年をとるごとに白あん好きになっています。引っ越した今も、馴染みの店に飲みに行くと、最中を買いに寄るのが楽しみですね。

東京〈小ざさ〉最中
〈小ざさ〉の最中。最中は小豆あんと白あんの2種。1個¥91。箱入り15個¥1,480。

鳥羽和久(教育者、作家)

シンプルかつ究極。大きな粒をそのまま味わう。

生粋のあんこ好きな私が常備しているのが、ゆであずき缶。お金がなかった大学院生の頃は、¥100の缶詰をコスパの良い貴重なカロリー源として、そのまま食べて主食にしていました(笑)。

大人になってから出会ってその上品なおいしさの虜になったのが、日本橋の老舗〈榮太樓總本鋪〉のプロデュースするゆであずき缶です。

甘さが控えめで、つぶあん派には嬉しいふっくらとした粒と少しざらざらした舌触りが持ち味。お湯に溶かしてぜんざいにしたり、アイスにかけたり、バターを塗ったパンに挟んだりと万能。
なんですが、最後に缶に少し残るゆであずきを一粒残らず平らげる瞬間が、やっぱり一番幸せかもしれません(笑)。

東京〈榮太樓總本舗〉和菓子屋のゆであずき缶
〈榮太樓總本鋪〉の和菓子屋のゆであずき 200g。。2014年から販売。北海道十勝産小豆を一晩糖蜜に漬け込む昔ながらの製法を続けており、コクのある深い味わいに。本店・直営店での販売はなし。各地の量販店やWEBショップで購入可能。希望小売価格¥324。