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村上虹郎、環ROY、柳亭小痴楽、片山真理、くどうれいん。自分史上最高あんこ vol.1

初めて口にした瞬間から今に至るまで、誰しもに「最高」なあんことの出会いがあり、そのエピソードに為人が表れます。深い味わいが"ボディブローのように効く"汁粉や、思わず背筋が伸びるほど美しい上生菓子など。あんこ好きな15人に、マイベストを聞きました。

Photo: Megumi Seki, Kazuharu Igarashi, Jun Nakagawa, Shimpei Suzuki, Wataru Kitao, Shinichi Suzuki / Text: Yoko Fujimori, Ryota Mukai,Emi Fukushima, Neo Iida, Nozomi Hasegawa / Styling: Keisuke Matsuoka / Hair&make: Takahiro Hashimoto

村上虹郎(俳優)

とにかく僕は、"あったかあんこ"ラバーです。

僕は大の甘党なのですが、好きなものは限られているんです。お汁粉とあんまん、この2つがとにかく大好き。現場の朝はコンビニに寄ってあんまん買って、血糖値を上げて行くのが日課です。

お汁粉やぜんざいは、蕎麦屋さんや温泉宿の食事処などで見かけると必ず頼みます。つぶあんぎっしりのぜんざいよりは、こしあんのサラッとした御前しるこ派。
あんこは大好きだけど、小豆だけでは僕には「圧」が強すぎるので、餅とか小麦粉とか、なにがしかの「プラス炭水化物」がある塩梅がちょうどいい。

だから羊羹よりもお汁粉、あんまん、あとたい焼きもいい。あ、そうか、僕は「あったかいあんこ」が好きなのか(笑)。

東京〈甘味 おかめ〉御前しるこ
〈甘味 おかめ 麹町店〉の御前しるこ。2度晒した滑らかなこしあんが見事。¥840。

おかめ〉はスタッフの方に教えてもらいました。ヴィンテージ家具好きなので、民藝の家具や調度品がある雰囲気もいいですね。この店の御前しるこは、滑らかで深みがすごい。

この沁み入る感じはなんというか……ジャブやフックじゃなくて、ハイスピードカメラで撮ってるボディブローみたいに、ズウ〜ンと腹に入ってくる感じ(笑)。
で、体に浸透すると元気になる。餅もおいしいし、この満足感はもう主食になり得る。現場の日の朝ご飯にしたら最高かも。ん〜まいっ。

俳優・村上虹朗

環ROY(ラッパー)

野菜にも似た自然の甘さに、心も体も喜ぶ。

あんこ菓子の中では羊羹が好きで、あまり大福を積極的に選ぶことはないのですが、初めて口にした時、世の中にこんなに上品な味があるのかと驚いたのが〈和のかし 巡〉の福巡り。

近所を散歩していて通りがかって、買ってみたのがきっかけです。白砂糖や添加物を一切使っていない、サツマイモやカボチャのような野菜に近い柔らかい甘さで、食べても全然疲れないんですよね。

良い素材だけで作られているので、子供と一緒に食べられるのもありがたい。僕自身、体が強いタイプではないので、甘いものはほどほどにしないと……と思うのですが、これは罪悪感がないので、音楽制作の合間に食べて、ストレスを発散しています。

東京〈和のかし 巡〉福巡り
〈和のかし 巡〉の福巡り。有機アガベシロップによる自然の甘さが持ち味。つぶあんとなめらかあんの2種類があり、環さんの選んだ後者は小豆の皮やアクまで丸ごと使用。1個¥378。

柳亭小痴楽(落語家)

親父の手みやげ、あんこ玉。

舟和〉のお菓子は、亡くなった親父(五代目柳亭痴楽)がよく持って帰ってきてました。芋ようかんも好きだけど、あんこ玉の一口でポンといける手軽さが好きでね。

僕が好きなのは小豆、珈琲、抹茶あたり。今は親父に代わって「じゃあ家族に」って買うようになりました。あと、寄席の日は楽屋に甘いものを差し入れることも多いんですよ。テーブルに何もないと寂しいから、みやげで花を添える。大概地のもの。

芸人って、世話になった土地にお金を落とす礼儀みたいなものがあるんです。「またお願いします」の気持ちを置いていくというかね。だから浅草の寄席に出る時は、きっと〈舟和〉であんこ玉を買うんだと思います。

東京〈舟和〉あんこ玉
〈舟和〉のあんこ玉。明治35(1902)年発売の老舗菓子。小豆、白いんげん、抹茶、苺、みかん、珈琲の6つの味のあんこを寒天でくるんだ。¥777(個入り)。

片山真理(現代芸術家)

思わず背筋が伸びる、作り手の丁寧で繊細な技。

友人に、娘の七五三のお祝いでいただいたのをきっかけに知ったのが、〈菓匠 菊家〉の季節の上生菓子です。
あんこはしっとりめだけどホロホロとした食感で、きちんと主張しながらも生地と馴染んでいて。口に運べば、溶けるような滑らかさもあり、その繊細なバランスに衝撃を受けました。

見た目も美しいこのお菓子をいただきながら考えるのは、職人さんのこと。美術館で先人の素晴らしい作品に触れて感激するのと同じように、そのクリエイティビティは尊敬せずにはいられません。

大好きな深煎りのブラックコーヒーと一緒にゆっくり時間をかけていただくと、同じ作り手として自分も頑張らなきゃ、と元気をもらえますね。

東京〈菓匠 菊家〉季節の上生菓子
〈菓匠 菊家〉の季節の上生菓子。季節の題材を象った練り切り。15種のあんこを使い分けている。各¥550(右/椿、左/白玉椿*2月頃まで販売)。

くどうれいん(作家)

ほんのり温めて頬張る、至福の組み合わせ。

故郷の岩手・盛岡のソウルフードとして愛される〈福田パン〉。“流行りのコッペパン”とひとくくりにされると言い返したくなる、面倒なファンをやっています(笑)。

定番のあんバターは、学校の購買部でも手に入る馴染みの味ですが、本当の意味で“出会えた”と感じた機会が2度あります。
まずは大学時代に初めて本店で出来たてを食べた時。そして、初めて電子レンジで温めた時。十数秒温めるだけで、溶けたバターがパンに染み渡り、ほんのり温かいあんことの相性が抜群になるんです。

胃より大きかろうパンにかぶりつく多幸感といったら!食べたくなるというより、気づいたらもう買っている。なくてはならない味です。

岩手〈福田パン〉あん・バター入りサンド
〈福田パン〉のあん・バター入りサンド。50種類以上のメニューの中でも、あんバターは不動の人気ナンバーワン!¥163。