下の2枚の写真のように、人間のものの運び方は、150年前のエジプトでも、現代の東京でもそれほど変わらないのが面白いと語るマイクさん。彼の10年来のパーソナルプロジェクト「Carrying Research」。そのなかで集めた資料やデッサン、古い鞄など、彼の頭の中を覗くと、「運ぶこと」の本質が見えてくる。
BIG BAGS
大きな鞄も、アイデア一つで楽に運ぶことができる。黒いビニール袋2つを結び付け、バランス良く体の前後に垂らせば、両手が空いてタバコに火をつけることも可能。1880年代のメキシコの行商人。背負いやすいよう、カゴが斜めに作られている。3枚目は豆の入ったバスケットを運ぶ男。人の背中に付いたサドルに驚愕。
NEWSPAPER BAG
マイクさんがマサチューセッツのフリーマーケットで買った1950年代のニュースペーパーバッグ。新聞紙を入れ肩から掛けると、まるで鞄が自分の体の一部であるかのように、ぴったりフィットする機能的デザイン。新聞配達少年が自転車に乗りながら、家の庭に片手でひょいと新聞を投げ込めるのも納得である。
BACK PACK FRAMES
「運ぶこと」の歴史を調査し、改めて鞄に目を向けると、その形状の根底にあるのは、人体の構造と運搬という行為の密接な関係性だった。木製の背負子(しょいこ)やアルミのバックパックフレームを背負うとそれがよくわかる、とマイクさんは言う。共に人間の骨のように丈夫で、体の延長であるかのように作られている。
PARTS of BAG
古い鞄は解体して気に入ったパーツだけを所有。まるで化石になって残った動物の骨のよう。1枚目は1950年代イギリスのスーツケースのパーツ。ハンドル、鍵、鞄の底に付いた鋲(びょう)。2枚目は1960年代日本の旅行鞄のガマ口。マイクさんいわく「解体することで、鞄の中の構造が見えてくる」。
MAIL BAGS
日本の郵便ポストの中に入っているバッグ。通常郵便(青)と速達(オレンジ)で、袋の色が違います。大切な手紙の取り残しは絶対厳禁!バッグの底にも持ち手が付いていて、ガマ口を逆さまに開けてチェックができる機能的な作り。さらに、静電気を防止する特殊な布地を使用している。

SUPERMARKET BAGS
スーパーの袋を持つ人の指を観察。袋を持つ時、全部の指を入れると逆に痛い。人によってしっくりくる指の掛け方があるようだ。そんななか考案されたハンディハンドル。運ぶために、まずこれを運ばなくてはいけないのが残念。
BRIDGE BAGS
ポスタルコでは、橋の構造が「重さを分散」させていることに注目して、その強度とバランスをバッグに応用。「運ぶ」ということでは、2つには共通点があるからである。マイクさんのイラストから、橋桁のようなバッグの力学が見て取れる。重さが1ヵ所に集中しなければ、薄い生地でも壊れにくい丈夫なバッグができる。画像3枚目は、鞄の断面図が見たくて切ったバッグ、とのこと。
画像4枚目のイラストは、左から/ストラップが支えるブリッジバッグシリーズ最新作、鹿革トートバッグ。持ち運びやすさを考えて硬いストラップを付けたドップキット。収納力の高いショルダーバッグタイプもある。
All about carrying
All about carrying 1
普段は無意識でしている新聞の持ち方にも、パターンがあることをリサーチ。街行く人々の手に注目したところ、新聞をフラットに持つ、丸めた先を持つ、真ん中を持つ、挟んだ指をブックマークにする人を発見。
All about carrying 2
リュックの背中に、鮨を巻く時の巻き簾(す)を取り付けたおじさんを発見。早速マネをしてマイクさんも作ってみたのがこちら。背中に空気が通るから、意外にも気持ちいい。ちょっとした工夫で、「運ぶこと」はぐんと楽になるのだ。