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ピーター・バラカンがオーナーのリスニングバー〈cheers pb〉で夏にかけるレコードの話を聞きました。

No. 942(2021.07.01発行)
音楽と酒・夏。

ピーター・バラカンさんが、ブロードキャスターの仕事ができなくなったらリスニングバーをやるのもいいという漠然とした思いを抱いていると聞いて、それならブルータス誌上でリスニングバーを開いてもらおうと始まった〈cheers pb〉。今回は特集に足並みを合わせて、「夏」をテーマに32曲セレクトしてもらった。ニッポンのウエットな夏とイギリスのドライな夏、果たしてバラカンさんの夏のイメージはどちらなのだろう。では〈cheers pb〉、開店の時間です♪

バラカンさんにとって夏の音楽というとどういうイメージですか?
ピーター・バラカン
どちらかというと、ゆったりした音楽かな。特に日本の夏はとても蒸し暑くて、暑苦しいくらいに感じることもあるから、家にいるときなどはゆったりめの音楽をかけることが多いですね。前回(ブルータス932号)で取り上げたボビー・チャールズあたりは、こんな企画があるとわかってたらこちら用に取っておきたかったくらい、まさに“夏”にもってこいのアルバムです。
 あと夏といえば、やっぱりレゲエですかね。特に僕の好きなルーツ・レゲエのゆったりしたリズムは、ピッタリだと思います。どちらかというと重たいサウンドのダブより、歌モノの方がいいでしょうね。前回選んだボブ・マーリィの『ラスタマン・ヴァイブレーション』は、まさにそんなアルバムです。もちろんダブはダブで、また別の魅力があるけれど。
 そう考えると、夏に聴いて気持ちがいいのはカリブ海沿岸諸国やアフリカといった、暑い国で作られた音楽が多いような気がします。やはり暑い夏を日常的に体験している彼らは、そんな夏を爽やかに楽しむための音楽を知っているのかもしれませんね。今回も、そういうところの音楽をいくつか選んでいます。
バラカンさんの故郷、ロンドンの夏は日本とはだいぶ違いますよね。
バラカン
そうですね、まず湿度が低いし、気温も日本ほど高くない。僕がロンドンを訪れるのはだいたい6月末から7月初めにかけてですが、この時期はイギリスで最も気持ちのいい気候です。でもイギリスの夏は短いので、8月の後半になるともう秋の気配が漂い始めます。残暑もないので、イギリスの人にとって夏は1ヵ月ちょっとしかない貴重品です。今回のレコードは日本の夏向きに選んでますけどね(笑)。
 ただ今回の32枚には、僕が夏に出逢ったレコードというのも数枚入っています。それは、そのレコードに針を落とすと僕の中で手に入れた夏の記憶が蘇るから。そんな体験はきっと誰にでもあるんじゃないかな。ちょっと個人的な夏のイメージですけど、〈cheers pb〉は僕の店なので許していただきましょう。
選盤作業はどのように?
バラカン
今回のようにテーマに合わせて選盤する場合には、そのイメージのままに思い浮かべて、そこから選んでいきます。まあ、でも、非常に感覚的な作業ですね。今回はあっという間に浮かんだ50枚ほどの中から削っていきました。
ところで今回、ニュー・オーリンズ色が薄いのはなぜですか?
バラカン
言われてみればそうですね。前回は僕のオールタイム・ベストというテーマだったから、自分にとって普遍性のある選曲になりました。そうなるとやっぱりニュー・オーリンズの作品が多くなったわけですね。今回は「僕が夏に聴きたいレコード」に特化していますから、あえてあまり知られていないレコードも少し選びました。ニュー・オーリンズの何かを追加するとしたら何がいいかな? ネヴィル・ブラザーズか、プロフェサー・ロングヘアあたり……。でも、せっかく32枚決めたし、変えてしまって全体のバランスが崩れるのも厄介です。そうだ、実はつい先ほど選び忘れたレコードを一枚思い出しました。差し替えさせてもらっていいですか。
まだ全然ダイジョーブです。それは誰のアルバムですか?
バラカン
フィービ・スノウ、彼女のデビュー・アルバムです。これは僕の個人的な夏の記憶にも関わってくるんですが、1974年7月1日に音楽出版社で働くために日本に来て、初出社したその日に最初に聴いたレコードがコレだったんです。詳しくは本編で話しますけれど、日本の夏といえばフィービ・スノウと言ってもいいくらい、今でもこの時期になると思い出すアルバムです。

▼Spotifyプレイリスト



〈cheers pb〉夏の32枚、レコードストーリーは本誌でどうぞ!

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Peter Barakan

ピーター・バラカン/1951年ロンドン生まれ。ロンドン大学日本語学科卒業後、74年に来日。音楽出版社などを経てブロードキャスターに。担当番組に『バラカン・ビート』(InterFM)などがある。2014年から『Peter Barakan’s Live Magic!』のキュレーターも。

photo/Masanori Kaneshita text/Kaz Yuzawa special thanks/Bar B-10

本記事は雑誌BRUTUS942号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は942号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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