アート

写真家・奥山由之が撮る"祖母の家と花"。

BRUTUSCOPE

No. 942(2021.07.01発行)
音楽と酒・夏。
ダリア。
ラナンキュラス。真上から写されたラナンキュラスは、横から差し込む自然光によって鮮烈で力強い印象を与える。「展覧会で感じた印象とはまた違って、ページをめくったときの気分や感情によって見え方が変わってくるのも写真集ならではの魅力だと思います」(篠崎さん)

フラワークリエイター・篠崎恵美が見た魔法のような写真。

6月に刊行された奥山由之の写真集『flowers』。亡き祖母が生前に暮らしていた家を改築してアトリエとしている彼が、祖母の気配に思いを馳せ、キッチンや窓際、庭先などさまざまな空間に佇む花を写したシリーズだ。

〈edenworks〉主宰のフラワークリエイター・篠崎恵美は、友人である奥山に自身のフラワーショップで扱っている花を提供してきた。

「奥山くんとの最初の出会いは撮影のお仕事だったのですが、それ以来たびたびアトリエに飾るための花を買いに来てくれていたんです。そこで"売れ残ったお花を廃棄するのが心苦しい"という話をしたら、"僕が写真に撮って残します"と言ってくれました」

 それから彼女は、週末限定のフラワーショップ〈edenworks bedroom〉を開いた翌日の月曜に、花と花瓶をセットで選び、奥山に渡すようになった。撮影する場所も時間帯も、すべて彼に任せていたという。

「撮影するお花を渡して、奥山くんが自由に撮ることがとても新鮮で、ワクワクしました。まるで、花を通じた交換日記を交わしているようで。渡していたのは売れ残ってしまった花や咲き終わったあとの花だったので、手渡すときはどこか悲しげに見えたんです。でも、奥山くんが撮った写真は、印象的な光も相まって、花の散る間際にしかないフォルムや色彩がいきいきと伝わってくる、あたたかくて魔法のような写真だなと感じました」

 表紙に掲載されているグラジオラスの写真は、彼女も特に気に入っている一枚だという。ぜひ手にとって、アトリエの静謐な空間のなかで再び息づく花の美しさを感じてほしい。

奥山由之『flowers』

2020年に〈PARCO MUSEUM TOKYO〉で開催された企画展『flowers』で発表した写真に加え、数年間にわたって奥山が亡き祖母との対話を重ねながら撮影してきた無数の花の写真をまとめた一冊。寝室や庭先、過去のアルバムなど、祖母の気配を感じる風景も織り交ぜられている。赤々舎/5,500円。

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篠崎恵美

しのざき・めぐみ/〈edenworks〉主宰。にまつわるさまざまなクリエイティブを手がける。今年3月、NEWoMan新宿店にフラワーショップ〈ew.note〉をオープン。

text/
Daiki Yamamoto

本記事は雑誌BRUTUS942号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は942号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.942
音楽と酒・夏。(2021.07.01発行)

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