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気鋭も巨匠も惹きつける、俳優ロバート・パティンソン。

BRUTUSCOPE

No. 940(2021.06.01発行)
京都で見る、買う、食べる、101のこと
『ライトハウス』ウィレム・デフォーとロバート・パティンソン演じる2人の灯台守の狂気を描いたA24製作のロバート・エガース監督によるサイコ・スリラー。7月9日、TOHOシネマズシャンテほか全国公開。 ©2019 A24 Films LLC. All Rights Reserved.

今、良作映画に出会うなら、「彼」を探せ。

ロバート・パティンソンという俳優を、『トワイライト』シリーズのイメージもあって、いまだにアイドル系だと思っている人もいるかもしれないが、ここ10年くらいの彼の仕事を見てくると、むしろ個性派とか性格俳優と呼びたい誘惑に駆られる。

 ご存じの通り、パティンソンは『ハリー・ポッター』シリーズで注目され、前述の『トワイライト』シリーズでスターダムにのし上がった。しかし、彼自身はそのようにアイドル的にもてはやされることを望んでいたわけではなかった。彼はむしろアート系を目指していたのだ。実際、第1作を監督したのが『ロード・オブ・ドッグタウン』などを撮っていたキャサリン・ハードウィックだったせいか、出演する前はアート寄りの映画になると思い込んでいたくらいだ。それは共演したクリステン・スチュワートも同様で、ハリウッドのA級リストに入っても、彼女の創造的欲求が満たされることはなかった。そして、彼女はその後ギャラの多寡は度外視してインディ系の作品に積極的に出演することになるが、奇妙にもパティンソンも同じ道を辿るのだ。

 そのきっかけとなったのが、デヴィッド・クローネンバーグからの『コズモポリス』のオファーだった。パティンソンは、世間の喧騒にうんざりし鬱状態になっていたところをこの作品に救われたと、後に述懐している。それで自信を取り戻したのか、彼はそれまでリスペクトしていた監督たちに自らコンタクトを取るようになる。その結果、ジェームズ・グレイの『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』やクレール・ドゥニの『ハイ・ライフ』のような批評家筋からも評価の高い作品に出演することになるのだ。

 そして、彼の触手は新しい才能にも伸びていく。『神様なんかくそくらえ』のビジュアルだけ見てサフディ兄弟にコンタクトを取り『グッド・タイム』に出演したり、クエンティン・タランティーノも絶賛した『アニマル・キングダム』のデヴィッド・ミショッドの『奪還者』のオーディションを自ら受けに行ったり、『サイモン・キラー』のアントニオ・カンポスの『悪魔はいつもそこに』では、誰もが嫌がりそうな役を逆オファーしたりするのだ。その一方で、俳優仲間のブラディ・コーベットが初監督するということで協力した『シークレット・オブ・モンスター』がいきなりヴェネチア国際映画祭で賞を獲るなど、彼の周りにも自然と若き才能が集まりつつある。

 そんなパティンソンが同じく目をつけたのが『ザ・ウィッチ』のロバート・エガースだ。A24が発掘した逸材たちの中でも断トツとの誉れ高いエガースに、例によってラブコールを送った結果、エガースの待望の2作目『ライトハウス』への出演を果たした。1890年代のニューイングランドの孤島の灯台を舞台に、まるでエドガー・アラン・ポーのゴシックホラーをハロルド・ピンターが二人芝居の劇に脚色したかのようなモノクロ・スタンダードのこの映画。パティンソンは、容易には聴き取れないような、当時のメイン州の労働者たちの訛りも見事我がものとし、共演のウィレム・デフォーとの火花を散らす演技合戦の末に、キャリア史上最高のパフォーマンスを見せてくれるのだ。

新しい才能とも積極的に結託。 注目のパティンソン出演作

写真:Everett Collection/アフロ

『奪還者』(2013)
新鋭デヴィッド・ミショッド監督の長編2作目。舞台は強盗がはびこる荒廃した世界。パティンソンは、自らが率いる強盗団に見捨てられた兄のため、復讐に挑む主人公レイを好演。

©COAL MOVIE LIMITED 2015

『シークレット・オブ・モンスター』(2015)
美少年が「独裁者」へと変貌する謎を追う心理サスペンス作。パティンソンの役柄も必見。監督はのちに映画『ポップスター』を手がけるブラディ・コーベット。

©2017 Hercules Film Investments, SARL

『グッド・タイム』(2017)
インディ映画界注目のジョシュ&ベニー・サフディ兄弟が監督を手がけたクライムサスペンス作。NYで先の見えない生活を送る青年コニーをパティンソンが演じる。販売はハピネット・メディアマーケティング。BD&DVD発売中。

『悪魔はいつもそこに』(2020)
アメリカの田舎町で暴力と欲望にまみれた人間たちが起こす負の連鎖を描く。パティンソンは欲にまみれた罪深い牧師を怪演。監督は新鋭、アントニオ・カンポス。Netflixで独占配信中。

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ロバート・パティンソン

1986年イギリス生まれ。俳優。代表作に『トワイライト』シリーズ、『コズモポリス』『グッド・タイム』『TENET テネット』。来年は、主演を務める『ザ・バットマン』が控えている。

text/
Mikado Koyanagi

本記事は雑誌BRUTUS940号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は940号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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