アート

「あえて見なかった」漫画家・堀道広が見た安西水丸の手業。

BRUTUSCOPE

No. 939(2021.05.17発行)
続・花と花束。
画面を横切る特徴的な一本線「ホリゾン」でテーブルの立体感を出しながら、安西は地元・千倉の海の水平線を思い浮かべたとか。 illustrated by Mizumaru Anzai ©Masumi Kishida
自身のエッセイ『ニッポン・あっちこっち』で描き添えたユーモラスな挿絵。 illustrated by Mizumaru Anzai ©Masumi Kishida

この上なく“危険”なイラストレーター。

 イラストレーションの業界に足を踏み入れてみると、「安西水丸さんの影響力をすごく受けた人」「ぽい人」がいるんだな、と思うことがある。そのくらい、安西水丸さんの影響力というのは大きかったんだなと思う。自分は、そういう作家を脳内パソコンのフォルダに「水丸さん系」に勝手にまとめて、ひとまずデスクトップに置き、どうするわけでもないがどことなく自分も「水丸さん系」にまとめられないように、あまり影響を受けないように、意識していた(笑)。水丸さんというのは自分にとってそんな「源流」のような存在だった。でも、この度の原稿依頼でしっかり観てその空気を吸いまくってしまった。

 ●素直に、観れて良かった。人類全員観るべき。いや、観てもいいけど、現役イラストレーターは入場禁止にして欲しい。うっかりスルーしてもらいたい。理由は、資料としてヤバいから。●やっぱりかわいくて、オシャレで、簡素でキレがあって、風刺が効いていて、イラストレーションとしての魅力がある。昔のものも、古さをまったく感じさせない。●元ネタ、源流を見た気がした。●子供の頃の絵もほとんど同じ作風ですごい。●展示の「しつらえ」が、水丸さんご本人と作ったようなとてもかわいいものだった。●小さいカットも、大きい絵も、絵本も、どの部分を切り取っても「安西水丸」とわかるのがすごい。●水丸さんの絵は文字の「クセ」と同じ延長線上で描かれている。そもそもセンスの良いかわいい人間が描くから、センスの良いかわいいものができる。センスと人柄、技術の蓄積が、絵に繋がっているんだろうな。●初期の方から、簡素なベタ塗りの絵でもカラートーンのように色が丁寧に端まで塗ってある。性格なんだろうと思う(自分の絵は、端まで塗らなかったり、最初だけ丁寧だったり、色ムラがあったりするので)。●これから先、影響を受けずに過ごしていけるだろうか……。

『イラストレーター 安西水丸展』

安西水丸(1942〜2014年)の幼少期から晩年に至るまでの足跡を、600点以上もの原画と関連資料で辿る。世田谷文学館(東京都世田谷区南烏山1−10−10)で8月31日まで開催。10時〜18時。原則月曜休。一般900円。臨時休館の場合あり。HP要確認。

https://www.setabun.or.jp/exhibition/20210424-0831_AnzaiMizumaru.html

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堀 道広

ほり・みちひろ/1975年富山県生まれ。うるし漫画家。98年『月刊漫画ガロ』でデビュー。東京近郊で〈金継ぎ部〉を主宰。近著に漫画『おれは短大出』、書籍『おうちでできるおおらか金継ぎ』がある。

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Michihiro Hori

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No.939
続・花と花束。(2021.05.17発行)

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