エンターテインメント

カン主題歌『デッドロック』。

滝本誠のCAFÉ NOIR

No. 939(2021.05.17発行)
続・花と花束。

 CAN(カン)というドイツの音楽集団があり、そのメンバーにダモ鈴木という日本人がいることを大学時代に教えられたのは誰からだったか? 〈どうも〉鈴木です、の略かな? ダーモすいません、などと新宿の喫茶店でダジャレあったことは覚えている。当時、こちらの髪の毛は一応肩を越えるほどはあったが、ダモ鈴木氏を音楽誌でみたら、髪が肩どころか腰まで伸びていて驚くことになる。

 女性の長髪でいえば、最近では、NiziUのマコさんの金髪がうつくしい。ダンスの時、彼女のロング・ヘアーがさわさわっと空間を裂いて躍動する様は、Kポップ系にあっても、あまり例をみないハイレベルな表現域にあるといっていい。そういえば、マコ岩松という日系俳優もいましたね。あ、閑話休題。

 閑話じゃなく、カンはホルガー・シューカィを中心とした前衛バンドだが、鳴らす音には独特の哀愁というか、郷愁めいたわかりやすさがある。人懐っこい音といえばいいか。特に、ヴォーカリストとして、ダモ鈴木が在籍したときはその印象が強い。ストリート・パフォーマーからの転身というのは、当時のアナーキーな気分を感じさせるものだが、それにしても、ダモ鈴木を目の当たりにしたドイツの聴衆はなによりその風体に驚いたにちがいない。超長髪、時に半裸、しかし、魅了されずにはいかないその歌声。1960年代のヘルマン・ヘッセ・ブームが西欧にもたらした〈東方の神秘〉〈聖なる野蛮〉の意識改革がダモ鈴木にとって、うまく働いたといえるかもしれない。

 カンが音楽を担当したドイツ映画らしからぬ過剰な汗、乾いた塩のざらつきを感じさせる映画『デッドロック』が、突然再発見されて公開が決定した。監督・脚本・製作のローラント・クリックが1970年に中東戦争のつかのまの休止中にイスラエル軍に守られながら、砂漠地帯を偽のアメリカに見立てて撮影したいわくつきの作品である。セルジオ・レオーネ『続・夕陽のガンマン』の見立て、主要登場人物の設定を借りつつ、砂漠と廃屋と少人数出演にふさわしい砂まみれの欲望犯罪が展開。なぜか、美少女も存在というあたり、観客へのトラップも完璧ダーモン♥

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たきもと・まこと

東京藝術大学卒業後、編集者に。著書に『映画の乳首、絵画の腓 AC 2017』(幻戯書房)。

本記事は雑誌BRUTUS939号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は939号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.939
続・花と花束。(2021.05.17発行)

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