【グリーンレストラン】Maison KEI/PLANT

グルマン温故知新

No. 939(2021.05.17発行)
続・花と花束。

目と舌で豊かな緑を楽しむレストランへ。

窓から見える新緑に癒やされながら、土地の自然の恵みを味わう贅沢を、話題の新店で。片や世界的トップシェフと老舗和菓子店のコラボ、片や都内の農家が仕掛けるシェアレストラン。緑に加え、ローカルガストロノミーや食農一体型レストランの新しい形が見える。

【Maison KEI ●静岡・御殿場】パリの3ツ星シェフが考える、ローカルの表現。

 パリ〈レストランケイ〉の小林圭シェフが、老舗和菓子店〈とらや〉とタッグを組み、静岡県御殿場市にレストランをオープン。フランスのミシュランガイドでアジア人初の3ツ星を獲得というビッグニュースから約1年。5年余りの準備期間を経て満を持しての開業が、奇しくも星に祝福された形だ。

「素材には旅をさせない」というのが小林シェフの考え。パリの店のシグニチャーでもある「ジャルダン・ドゥ・レギューム・クロッカン」は地元・静岡の野菜やマスを使った御殿場エディション。すべての皿の主役は、地産野菜や近海の魚介など、足元で育まれる食材だ。さらに「まずは地域に根ざした店にしたい」と、コースはディナーでも5,000円台から。トップシェフが手がける店としては破格で、その考えも斬新だ。とはいえ店を囲む木立の先に、富士山を望む好ロケーション。県外、海外の多くのフーディーも予約の機を狙っているはず。

料理長は〈レストランケイ〉でスーシェフも務めた佐藤充宜シェフ。
ジャルダン・ドゥ・レギューム・クロッカン
ジャルダン・ドゥ・レギューム・クロッカン

黒オリーブのクロッカン(クランブル)を、卓上でかけて仕上げる。レモン風味の爽やかな泡のソースに加え、クヌギマスの燻製、トマトのソースやルッコラのムースが、新鮮な野菜の苦味や甘味を引き立てる。崩すのが惜しい美しさだが、豪快に混ぜて食べるのが正解。料理はすべて3,850円のコースから。

小鳩のロースト 味噌のコンディモン
小鳩のロースト 味噌のコンディモン

モモ肉は一度コンフィにした後、ベニエに。胸肉は、シンプルにローストで。味噌のコンディモンがアクセントに。小鳩のだしを煮詰めたソース、レバーのペーストと合わせ、一羽を余すところなく(プラス1,980円)。

バシュラン

〈レストランケイ〉でも人気のデセールに〈とらや〉のあんこや羊羹を加えアップデート。酸味を効かせたイチゴ風味のメレンゲの下に、白味噌とイチゴのアイス、イチゴのマリネなど、さまざまな味わい、食感の層が潜む。

大きな窓が開放的な店内。建築設計は内藤廣が手がけた。

【PLANT ●蓮根】東京から発信する、農家レストランの最新形。

 脱サラして東京都板橋区に無農薬・無化学肥料で野菜を育てる〈THE HASUNE FARM〉を立ち上げた冨永悠さん。畑から徒歩5分の場所にある庭付きの古い民家をリノベーションし、週替わりのゲストシェフが厨房に立つレストランを開いた。循環型の都市農業とシェアレストランが一体となった、次代の農家レストランだ。

 現在は、白石貴之シェフと青柳陽子シェフの2人が週替わりで厨房に。白石シェフは〈レストラン イートリップ〉、青柳シェフは〈81〉と、共に東京レストランシーンの最前線で経験を積んだ注目の料理人だ。「花や脇芽など、流通しないものもすべて素材になる」と、嬉々として話す白石シェフ。収穫したてのカブや、根ごと使う葉野菜の間引き株の鮮烈な味や香りは、肉や魚に劣らぬ存在感だ。緑豊かな庭もレストラン仕様に絶賛整備中。窓越しに愛でるだけでなく、オープンエアでのアペリティフが楽しめる日も近そう。

白石シェフ。カリフォルニア州〈シェ・パニース〉でのスタジエ経験から農業に関心を抱くように。
山形県産黒毛和牛 経産牛のロースト

あやめ雪かぶやのらぼう菜、茎ブロッコリー。異なる調理法で味を引き出した旬の野菜が、皿のもう一つの主役。いい噛み応えがあり、サシもほどよく入ったブリスケ(モモの付け根部分)の力強い味わいとも調和する。黒ニンニクのソース、黒オリーブのパウダーを添えて。料理はすべて11,000円のコースから。

天然マスのミ・キュイ

間引きしたカラシ菜、ワサビ菜は、細い根ごと使うことで、香りがより際立つ。山形県庄内産のサクラマスは、ねっとりとした食感とほろりとした口溶けを楽しませる王道の火入れ。ビーツのソースとキヌアがアクセントに。

サラダ・ラティーナ

柔らかくみずみずしいイタリア原産のカブ、サラダ・ラティーナを「丸ごとかじるように」味わえる。自家製リコッタチーズ、カブの葉の香りを移したオイルが味の引き立て役。セルバチコやカラシ菜の花が彩りを添える。

厨房前のテーブルが中心。
カテゴリの記事をもっと読む

Maison KEI

電話:0550・81・2231
営業時間:11時30分~12時30分、17時30分~18時30分(共に最終入店、要予約)。
酒:ワイン約60種6,600円~、グラスワイン約10種990円~。
価格:コース昼3,850円~、夜5,280円~。2021年6月に価格改訂予定。
席数:テーブル11卓29席、個室1室6席、半個室2室各6席。

静岡県御殿場市東山527−1。火曜・水曜休。JRほか御殿場駅からタクシーで約15分。2021年1月30日オープン。御殿場市は〈とらや〉国内最大の工場があるなど、以前から同店と縁の深い土地。社長の黒川光晴さんと小林シェフの親交は10年以上に及ぶ。フランス日本産のワインのほか、静岡県産の茶葉を使用した水出し茶やティーカクテルなども揃え、ドリンクでもローカルを表現。

PLANT

電話:非掲載
営業時間:昼11時30分~、13時30分~の2回制(土・日・祝12時~)、夜18時~。
酒:グラスワイン1,100円~、ボトルワイン5,500円~(白石シェフ担当日)。
価格:コース11,000円。平日昼コース3,300円。
席数:2卓14席。

東京都板橋区蓮根1−14−22。月曜休、不定休。都営三田線蓮根駅西口から徒歩12分。2021年3月31日オープン。完全予約制(予約はhasuneplant.comから)。ワインなどのドリンクも、料理に合わせシェフが用意。白石シェフは、ナチュラルワインに加え千葉県の薬草園兼蒸留所〈ミトサヤ〉のボタニカルブランデーなども提供。店はギャラリーを併設し、ゆくゆくは食と農業のイベントも企画予定。

photo/
Yoichiro Kikuchi
文/
佐々木ケイ

本記事は雑誌BRUTUS939号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は939号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.939
続・花と花束。(2021.05.17発行)

関連記事