アート

ピピロッティ・リストの回顧展が、京都で開催。

BRUTUSCOPE

No. 938(2021.05.01発行)
HOME SWEET HOME 居住空間学2021
《ヒップライト(またはおしりの悟り)》 2021年 物干しのように吊された白い下着がモチーフとなった屋外作品。普段は自分自身や親しい人の目にしか触れず、慎ましやかに人体の重心を包む下着が空中で軽やかにはためくさまは、重さからの解放を象徴しているようにも見える。 京都国立近代美術館での展示風景

そうだ ピピ、見よう。

 スイスを拠点に国際的に活躍するピピロッティ・リストの回顧展が京都国立近代美術館で幕を開けた。リストは1980年代から注目を集め、97年のヴェネチア・ビエンナーレで世界的な評価を受けて以降、ジェンダーや身体、環境問題など現代社会に通底するテーマを扱ってきた。その抒情詩的な世界に誘う本展のタイトルは『あなたの眼はわたしの島』。その意味は、「私たちの存在は、他者の視線があってこそ。他者の眼は島々のように点在し、注目や同情の眼差しを向けられて、ブラックホールのような社会から救われることもある。また、個々人に内在する世界を、外の集団的な世界と、いかにして繋げるかを提起しています」

 日本での13年ぶりの個展となる本展は、約40の作品で構成。初期作から代表作、自然と人間との共生をのびやかに謳う近年の大規模なプロジェクション、映像と家具が溶け合うリビングルーム、リサイクル品を活用した屋外作品まで、約30年間の活動の全体像を紹介する。

「最近問題だと思うのは、たとえ同じ部屋にいても、みんなが小さな画面に支配されて、精神的に分断されてしまっていること。この展示では、鑑賞者が横になったり座ったり、様々な姿勢で自由に一緒に映像を体験する。それぞれがいろんなことを頭の中に思い描き、考え、そして鑑賞者がお互いを“見る”という体験をしてほしいと思います」

京都国立近代美術館蔵 Photo by Alexander Trohler

《永遠は終わった、永遠はあらゆる場所に》1997年
ヴェネチア・ビエンナーレ若手作家部門賞受賞。コーナーの壁一枚に花形のハンマーで車の窓ガラスを割る女性、もう一枚には花が投影される。実はビヨンセのMVのパロディでジェンダーやフェミニズムについて問うている。

ヘイワードギャラリーでの展示風景 Photo: Linda Nylind

《溶岩の坩堝でわれを忘れて》1994年
1997年からMoMA PS−1で継続的に公開されている初期短編ビデオ作品の一つ。画面にはリスト自身が映り、両手を伸ばして助けを求めている。作品を見るために、床に開いた小さな穴を覗き込む必要がある。

オーストラリア現代美術館での展示風景 Photo: Anna Kucera

《4階から穏やかさへ向かって》2016年
「まるでモネの《睡蓮》を水の下側から見たような景色」が広がっていたという、ライン川の水中で撮影された断片的な映像。デンマークのテキスタイルメーカーKvadratのテキスタイルに覆われたベッドに横たわり鑑賞。

チューリヒ美術館での展示風景 Photo: Lena Huber

《忍耐》2016年
近年は美術館の展示室で、リビングルームのように体を解放しながら作品を体験できる大規模なインスタレーション空間を演出する。リストは鑑賞者が自らの意思で作品とどのような関係を結ぶかに関心があるという。

ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island -あなたの眼はわたしの島-

〜6月13日、京都国立近代美術館(京都府京都市左京区岡崎円勝寺町☎075・761・4111)で開催中。9時30分〜17時(金・土〜20時。入館は閉館の30分前まで)。月曜休(5月3日は開館)。一般1,200円。靴下と靴袋を持参のこと。本展は今夏、水戸芸術館に巡回予定。

https://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2021/441.html

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photo/
Kunihiro Fukumori
text/
Mako Yamato

本記事は雑誌BRUTUS938号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は938号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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